恋花火。...3

133. ページ33

陽も落ちて辺りは薄暗く

店先のランプや電球が輝き出す頃

さっきよりかは少なくなった人の波を見て大海と真夏に声をかけた

『二人とも順番に少し休んでおいで。花火終わったら帰りの人でまた人増えるから今のうちに。』

そう声をかけると大海は、

〔俺、大丈夫っすよ。真夏休んでこいよ。〕

と言い、真夏は、

〈疲れてないからいい。〉

と言う。


なんて真面目な二人なんだ

関心してしまう。

俺なんていつだって休みたいのに笑


『じゃあ大海も真夏も裏から出て花火の写真撮ってきて。いい写真だった方に俺が好きなもん奢ってやる。』

そうニヤッと笑えば

〔まじっすか？〕

〈え？なんでも？やる。〉

と俄然やる気になる二人。

大海も真夏も負けず嫌いなことは知っていた

そして奢りという言葉に弱い事も笑


こうでもしないと休まない二人

ありがたいことだ。







そうこうしているうちに、










ドーーーーーーーーーン










という大きな音と共に暗い夜空が淡い桜色にうっすらと染まった...

店の焼き場からは花火そのものは見えなくて

音と共に濃くなったり薄くなったりする桜色の光が空をチカチカと照らしていた...

大きな音や重なる無数の花火の音に

見上げるたくさんの人たちの歓声が入り混じって

今年もこの季節が来たことと

今年もこの夏が終わっていくことを

同時に実感していた...


君はどこかでこの花火を見ることができたのだろうか...

そんなことを思いながら

去年の花火を見上げる綺麗な横顔を思い浮かべていた...

一緒に見れなくても

君が幸せな顔で

この花火を見上げられれば

それでいいんだ...












少しして大海と真夏は真剣な顔で俺の前に現れて

ケータイの画面を無言で差し出してきた。

ふたりの目は信じられないくらい真剣だ。


〔で、どっちっすか？〕

〈わたしに決まってない？〉


自信あり気に画面をずいずいと出してくるふたりのケータイには満開の桜の木の下にいるような写真が収められていて、本気で勝ちにきていることが目に見えてわかった笑



『おー。すげー。こんな綺麗に撮れるんだ。んじゃふたりとも後で写真送って。』

そう笑って二人の肩をポンっと叩くと

〔え？勝敗は？！〕

〈奢りはー？〉

と騒ぐ二人に、


『ドロー。だからふたりとも奢ってあげる。だから最後までまだまだお付き合い下さい。』

深々頭を下げると

大海も真夏も結局なんだかんだ楽しそうに笑ったんだ...

134.→←132.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す