FKの少し甘い日常-F-

やきもち-F-9 ページ44

その隠れ家的な居酒屋へ着くと、個室に通された


部屋へ入ると、座敷になっていて、奥に宮田、テーブルを挟んで玉、その隣にきたやまが丸くなって眠っていて、玉のコートが上からかけてあった


「あー、ガヤ来た」

「ガヤさん、良かった！

タクシー呼ぼうかマネージャー呼ぼうか悩んでたとこだった」

「ありがとう
もしまたこんな事があれば迷わず俺呼んで」



その配慮とご厚意は心からありがたかったが、角が立たないように玉のコートをお返しして、俺のジャケットをかける

その様子を玉が生温かい目で見守っているのが分かるが、気にかけていられない


「こんなに酔ったきたみつ、久しぶりに見たよ、大丈夫そう？」

「…きたやま、なんか言ってた？」

「…何も

聞き出そうとしたんだけどね

ずっと、一生懸命仕事の話して、俺たちの話聞いてくれて」



「…そうか

ふたりともありがとう
俺の家に連れて行くから」
　
　

眠っているきたやまの耳元にそっと声を掛ける


「きたやま」

「ん…ふじがや」

「きたやま、俺の家に行くよ？」

「行かない…」


断られてだいぶ傷付くが仕方ない

背中に腕を入れて起こそうとすると、さらに抵抗された


「やめろって…
俺男だし」


その言葉に凍りつき、一瞬身動きができなくなってしまった
　



「…だから、何？」



自分でも最近聞いたことがないような、低い声になった

玉と宮田も一瞬固まってしまったほど



「…きたやまわかるよね
今2人に迷惑掛けてるんだよ？」

気持ちを抑えに抑えて、問いかけると、のろのろと身体を起こそうとする

「ガヤ、怒らないで大丈夫だから
ちゃんと話聞いてあげて」

「うん、俺たちむしろ楽しかったし」

久しぶりに感情を剥き出しにした俺を見て、驚いたらしいふたりがきたやまのフォローに回りだした

「ふたりとも心配しないでいいよ
大丈夫怒ったりしないから

もう遅いからとにかく家に帰ろう？」


「…」


言えば、諦めたのかまだ酔っ払っててよく分かっていないのか、2人の前だと言うのにきゅ、と首に巻き付いて来たきたやまを、抱き上げて起こして、今日はありがとう、とお礼を言い、会計を済ませて店を出た

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