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しばらくりょうくんの運転に揺られていると、見慣れた文字が
“ようこそ 岡崎市へ”
「(わー…岡崎だあ)」
窓の外を見つめ、小さく心の中で感動する。
思ったよりも普通の町だけれど、度々動画で見かけたシンボルや道なりに喜びを感じる。
「もしもーし」
「…」
「Aちゃん？笑」
「…あっ、ごめん、なさい」
「見つめすぎ、そんなに感動するような風景じゃないよ」
「やっぱ嬉しくなっちゃうよ」
「そんなもんなのかなー笑」
どこを走ってもなんか見たことのある光景で、
ここなんの動画だったかなーとか考えながら、きょろきょろ見渡してた。
こうなると隣にいるご本人そっちのけで、完全にいち視聴者として聖地巡礼ドライブを楽しんでいた。
そしたら、りょうくんが
「…なーんか、不思議な気分だなぁ」
とつぶやいた。
私は意味がつかめず、
「不思議？」
と聞く。
「俺からしたら、地元を女の子乗せて走ってて、すっごい不思議な気分」
「またまた
りょうくん、女の子乗せ慣れてるでしょ」
「なにそれ笑 乗せ慣れてないよ」
「えー」
「本当だよ、女の子を二人きりで乗せたのなんて数年ぶりかも」
「ぜったいうそ」
「なんで笑 あ、でも送ったりとかはあったかな…」
「ほら笑」
「いやでも、こんな二人きりでデートは数年ぶりよ？」
さらっとデートとか言うから硬直しかける。
本当に自覚がないのか、この伊達男さんは。
「ふーん…」
至極平然を装おうと思って、相槌を打ってみたけど。
ふーんはやばい。絶対ふーんでごまかせてない気がする。
「だから俺、すーごく嬉しいよ？」
「…」
なにこれ。
ものすごく顔が熱くなる予感がする。
「そ、っか」
耐えきれずに、私は言った。
「ごめん、そこのコンビニ寄ってもらってもいい？」
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作者名：雨粒 | 作成日時：2020年9月2日 13時
