9/ヒューゴー・ヴェルジュール ページ11
???「君は見ない顔だな、俺はヒューゴー・ヴェルジュール。君の名前は?」
「私は………Aよ。」
ヒューゴー「Aか、いい名前だ。」
名前を褒められたのは初めてだ。思わずはにかむと、ヒューゴーは目を丸くさせたのち顔を赤らめた。
ヒューゴー「Aは歌が上手なんだな」
「ありがとう、歌うのは昔から好きだから………よくこうして歌うの。」
ヒューゴー「昔から………?」
Aが歌うことが好きなのは本当に昔からだ。
よくオーシャンやジョーの前でも歌っていたが、海面から顔を出して歌うことも珍しくはなかった。一時期彼女の歌声を聴いた漁師が「セイレーンだろう」などと騒ぎ立てて捜索をしていたが、危険を察知した彼女は上手いこと隠れたようで見つかりはしなかったが。
そんな彼女の歌声に魅了されていたのは、漁師だけではなかったようだ。
ヒューゴー「俺の記憶が間違いでなければ………多分俺は君の声を聞いたことがある」
「え?でも、会うのは今日が初めてよ?」
ヒューゴー「そうなんだが………あんな綺麗な歌声を間違えるはずがない。」
Aにはそんな記憶当然なかった。
彼女は誰かに聞かせるためでなければいちいち自分の歌を聴いた人物を覚えているわけでもないし、ましてや人間を把握することなんてさすがにしない。
ヒューゴーもAも頭に「?」を浮かべて考え込むも、結論は見つからないようで唸る声が重なった。
それに気がつくとら2人で顔を見合わせてくすりと吹き出した。
ヒューゴー「歌っている時とは大違いだな」
「それ、どういう意味?」
ヒューゴー「悪い意味と捉えないでくれ。歌っている最中はすごく神秘的に見えて……なんだか近寄り難かったんだよ」
フォローになってないわよ、とヒューゴーの腕を軽く叩くA。
初対面とは思えない程に親しみやすい彼に、だんだんAは胸に新たな感情が芽生えるのがわかった。
ヒューゴー「おっと、もう日が沈みはじめてるな。そろそろ仕事に戻らないと。」
「もういっちゃうの?」
ヒューゴー「あぁ、次のショーの衣装を考えなくてはいけないんだ。だが、君にさよならを言うつもりはない。明日、この時間にまたここで待ってる。」
それだけ告げると、ヒューゴーは足早にその場を後にし、ヒューゴーと入れ違いになるように、ジョーが戻ってきた。
ジョー「悪い、遅れた…………お前、茹で蛸みたいになってんぞ」
「え?あっ………!」
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ヴィランズ尊くて無理 - 続き楽しみにしてます‼ (8月9日 17時) (レス) @page19 id: 3b56fa98f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:下呂 x他1人 | 作成日時:2022年10月19日 17時