15/計算の狂い ページ17
エイトフットside
あいつと人間の男が絡み始めて何ヶ月経っただろう。
俺の状況を簡潔に言ってしまえば、狂いそうだった。
あの時人間界に連れて行けとせがむAをしつこく引き止めなかったのは、あの男と話すことで人間の醜さを理解すると思ったからなのだが………あいつは珍しく綺麗な心を持った男であった。
俺が見てきたような下品な男ではなく、純真な彼と知り合ったことでAはさらに人間の世界へ興味を持つばかりで俺の計算とは大きくずれている。おまけにあいつとの時間ができた分俺のところへくる時間は明らかに減ってもいるわけで。
これは計算外だ。
これ以上あいつとあの男が親しげに話し心を通わす姿を見せつけられようものなら俺の切れてはいけないものが切れそうになり、己が恐ろしくなる。
あぁ、A。愛しいA。そんな人間に笑いかけないでくれ。俺の見たことのないそんな美しい顔で、そんな野蛮な人間に。
それ以上、人間に汚されるな。
何か新しい手を考えねばと思っていると、ふと足元に何かが落ちた。
それは昨日ミスターから届いた今年のリクルーティングについて書かれた手紙。毎年同じ文章が書いてある辺り案外ズボラな彼の性格が伺える。
数多くの人間と関わる………そうだ、これだ。
我ながら安直な考えではあるものの、もう俺に細かく考えるほどの賢さは残っていなかったらしい。
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ヴィランズ尊くて無理 - 続き楽しみにしてます‼ (8月9日 17時) (レス) @page19 id: 3b56fa98f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:下呂 x他1人 | 作成日時:2022年10月19日 17時