Dix ページ43
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「引っ越した？あの館に！？」
「声でかいよお前」
ソジュンの大きい声にクラスメイトは全く気にしていない様子で誰もこちらを振り向かなかった。
今朝、グクの館の道からまたひょっこり出てきた俺の全身をチェックし始めたソジュンはずっとこんな様子だ。
あんな話を聞いたあとだったから不安なのはわかるがまだ生傷である肩を触られるのは痛かったから勘弁して欲しかった。
幸いにもバレることは無かったがいずれあの館にいることを知るのは時間の問題だと思ったので住み始めたことは迷わずにそう言った。
「え！？ヴァンパイア…ヴァンパイアは！？」
「いねえよ、幼馴染が住んでるとこだから」
「幼馴染！？何！？A、俺頭が追いつかないんだけど！」
興奮でどんどん前のめりになるソジュンを無視してスープを飲んだ。
一から説明するのも面倒くさいしグクの事で何かボロが出たら困るのでそれ以上は何も話さない。
質問責めに全部答えないでいると諦めたのか椅子に座り直してソジュンも飯を食べ始めた。
「んで、その子と付き合うことになった」
「はぁ！？」
箸から米がぽとりと茶碗に戻っていく。
さすがに館からの報告は急すぎたかな、と口をあんぐりと開けたまま動かなくなってしまったソジュンに笑ってしまった。
「お前…！」
「早く食べないと冷えるぞ」
箸を持ったままわなわな震え始めたソジュンを急かすとヤケクソといった様子で米をかき込んだ。
口をハムスターぐらいパンパンに膨らませて睨まれる。
「俺も早く彼女作らなきゃ…」
「何だそれ」
「でもさ、良かったよ。何かココ最近、A明るくなったし」
既にヴァンパイアから彼女を作ることに話題がシフトチェンジしているのを面白がっているとソジュンは口にどんどんおかずを放り込みながらそう言った。
「ソジュンって意外と良い奴だよな」
「意外って何だよ！友達思いだろ」
ソジュンは深く突っ込んでくることもなく塾の話をし始めた。
毎日のように詰められている塾の日程に愚痴が止まらないようだ。
その後も他愛ない話をしながら給食を食べる。
ソジュンの話を聞きつつも俺はもう帰った時のことを考えていた。
家に帰るのが楽しみだ。
こんなにわくわくした気持ちになるのは一体いつ以来だろうか？
まだまだ残る学校に早く終われと俺はずっとそわそわと落ち着きがないまま過ごしていた。
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作者名：ユウたろー | 作成日時：2023年9月28日 2時
