恋だけできればいいです。【短編集】 (ページ1)

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君のお家に1【鉄】ページ1

「いいなぁ鉄くん。」
「？なにがだ」

夏休みも半ばのある日。
私は同じクラスの男の子の家にきていた。

普段、あまり人と話すことになれていない私がペア決めで余ったときに優しく話しかけてくれたのがこの男の子。
千駄ヶ谷鉄くんだったのだ。

鉄くんは自分から自分のことを話そうとはしないが、聞けば大抵のことは答えてくれた。
いつも、私は塾。鉄くんはお家の手伝いか何かで中々遊べなかったから、お家にお邪魔するのは今日は初めてだ。

「何がって、このこだよ！」
「ヒューがどうかしたか？」
「どうかでもないよ！鉄くん吸血鬼と一緒に暮らしてたって聞いてないよ！？しかもこんなに可愛い....」
「そうじゃろそうじゃろ！可愛かろ！！なんてったって我輩はこの温泉旅館の守護吸血鬼じゃからのう！」

見た目5歳児くらいのこだが、話し方や態度が正に吸血鬼そのものって感じで更に可愛い。むしろ天使だ。

正座を少し崩したようにして座っている私の膝の上に乗っているヒューちゃんがパイプをふりながら続ける。

「まぁ最近の吸血鬼たちは物騒じゃから、鉄もお前さんに言わなかったのじゃろう」
「いや、聞かれなかったから」
「普通にできる質問じゃないんだからいってよ！！吸血鬼がほんとにいることすら知らなかったよ」
「失礼じゃがまぁそうじゃろうな」

なるほどと納得した矢先にこれだ。鉄くんはヒューちゃんとは逆で見た目は大人なのに少し抜けている。

そこが可愛かったりもするけど...

「ヒューちゃんの他に吸血鬼っているんだよね？」
「いるぞ！我輩の下位吸血鬼や兄弟がな！」
「ざぶ...くらす？兄弟がいるの？」
「まぁいきなり言われてもわからないじゃろうな！じゃが、鉄のがーるふれんどなら知っていくべきじゃろう！！貴様はなかなか見込みあるしのう！」
「がががーるふれんどじゃないよ！！！ただ同じクラスってだけだしね！！」
「そーなのか？じゃが鉄はいつもお前さんの話を」
「わっーー！！！」

聞きたい話でもあるが思わずヒューちゃんの口を大声を出しながら抑えてしまった。
鉄くんが私の話を？どんな？いつも一人とか？それとも
「どうしたA」
「わっーー！！！鉄くん！！！！いないと思ったら！！」
「おう、折角きたんだからゆっくりしていけよ」
「あ、ありがとう.....」

私とヒューちゃんが話してる間に麦茶を用意してくれていたらしく、手渡しされる。

抜けていると言ったけどやっぱり温泉宿の跡取り息子だけあって気が利いているらしい。

ひんやりとしたお茶に先程火照った体を冷やしてもらいながらまた話を始めた。