8時 ページ10
突然の出来事過ぎてまともな反応が出来なかった。
「ひゃあ、」
誰かに悲鳴とともに空を飛んだティーポット、それを目で追っていたら その先に空軍のマーサが居ることに気がついた。
自分の方に手を引いて引っ張れば良かったものの、正常な判断がつかず 私はマーサの前に立つ。
揺れる赤茶色、透明な鈍器がすぐ側まで迫って かなり至近距離でごつん と音を鳴らして 私の額が酷く痛む。きゅっと唇を噛んで痛みに耐えたら、足元でがしゃん という酷い音が鳴った。
部屋に落ちる沈黙、流れる静寂。ゆっくりと目を開けば 視界の内側に 赤色が見えた。
「……A!」
耳元でいつもは落ち着きのある凛とした声が私を呼んだ。そちらを見れば、顔を青くしたマーサが私の額にハンカチを当てた。
「う、」
「血出てる!っていうか服も紅茶だらけだし!とりあえず着替えたりしましょ、傷も見ないとだし行くわよ!」
ずきん、と頭に痛みが走って肩を震わせるものの 酷く焦った様子でマーサが手を引くので 足を縺れさせながら着いて行った。
ちらり、後ろを振り向けば泣きそうな顔をしたエマが座り込んでいたので、 彼女がきっと躓いてティーポットは空を舞ったんだ。仕方ない、何もそんな顔をする必要は無い。
何処と無くふわふわする視界をそのままに、手を挙げてエマに向かって叫んだ。
「大丈夫だよ〜!私、強いから!」
エマはついにその頬を濡らしてしまう。あれ、なんて思いながら困った顔をすれば 今度こそマーサは力強く私の手を握った。
「大人しく着いて来なさい!」
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作者名:鯖原 | 作成日時:2019年2月20日 13時