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「クラーク君、目を擦りすぎちゃいけないよ。」


やけに絵のように美しく見えた君が原因なんだけど、と内心責任転換をしつつ目を擦るのをやめれば思ったより近くで彼女が自分を見ていたことに驚いて 数歩後ろに下がった。
「もう夜中だもんね、チェスに付き合ってくれてありがとう。寝よう、クラーク君」


「ああ…」
そう言ってころころと笑いながら
不意に するり、と僕の手を掴んだ。


突然彼女に掴まれて驚いたのか 、自分でも分からないまま慌てて手を振り払ってしまう。

ぱち と音を立てて離れた手と手 彼女も僕も何が起きたのかわからないような顔をして 僕の手を見つめた。


なんで、今 僕は彼女の手を振り払ったのだろう。


ぽかんとした表情の彼女が口から零れるような声でこう言った。
「迷惑だった?」
不安とか不満とかそういう声ではなかった、ただただ不思議そうな声。けれど近付くことも無く 一定の距離を保ったまま彼女はそう 僕に問いかけた。

迷惑じゃなかった。けれど触れられたら、良くないと思ったのだ。
なぜなのかは判らない、けれど触れられれば何かが壊れる気がした。
これ以上は近付いてはならないと思ったんだ。


「…迷惑じゃない」

そう答えたものの今の行動を見れば誰だって迷惑だと思ってやったと思うだろう。
いくら変わった思考を持つAだって、前 離れてくれと言われて迷惑と解釈したのだからそう思う筈だ。

Aは興味無さげにへえ、と言った後
「そうか」とシンプルに反応して席を立った。



刹那、その反応を見た僕の心臓がひと殴りされたかのような違和感が胸を締め付けた。
変だ、僕は 今おかしい。


興味が無さげな反応を見て、彼女に見離されたくないと少しだけ思った。

彼女に興味を持たれなくなるのが嫌だと思ったのだ。
なぜだかわからないけどそう思ってしまって、混乱する頭で席を立って出口へと歩く彼女の後ろを着いて歩いた。
「待って」と言いたくなる口を紡いで、少し混乱する頭をなんとか落ち着かせようと深呼吸をする。
肩では相棒が不安げにこちらを覗き込んでいた。



僕は、寝惚けてでもいるのだろうか。

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作者名:鯖原 | 作成日時:2019年1月30日 0時

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