ワンカップにカカオを敷き詰めて (ページ12)

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そうして話は振り出しの件に戻る。
「それでその言葉通り紙を食べたのか」
「うん、1枚引き裂いて口に入れたよ。勿論その場でぺっと出すわけにもいかないからちゃんと噛んで飲み込んだよ」

最早狂気だ。ライリーも滅茶苦茶なことを言ってはいるがまさか彼女がそこまでするとは思っていなかっただろう。
「…ライリーは？」
「食べてないよ」
「そっちじゃなくて…どんな顔してた？」

単純に興味でそう問えば、彼女はにこりと爽やかに笑う。
「目をまん丸にしてた。腹を壊しても僕は知らないからな、って言って居なくなったよ。」
まあそれが当然だろう。

そうして話し終えた彼女は、徐にこう言った。
「因みに味がしなくてただ口内の水分が奪われただけだったからクラーク君は食べない方がいいよ」
「食べるわけないだろ」

思わず間髪入れずに返してしまう程衝撃を受けた。
流石の彼女でも紙を食べたなんて相当とち狂っているなという印象だったのに、その当の本人からこいつは紙を口に入れそうなやつ、と見られているという事だろう。

彼女から見て僕はそんなに狂った奴に見えているのだろうか。
複雑に思いつつも、「そうかい」と笑う彼女を見て溜息を吐いた。

そういえば、この部屋に入って一番最初に思ったこと
彼女が何故かご機嫌だということ。
それが何処から来た期限の良さなのかをなんとなく知りたかったので、終了した会話の代わりにそれを口にした。

「今日は随分と機嫌がいいな。」
そう言われたAは少し動きを止めてから返事をした。
「…そう見える？」
「ああ」

そう肯定すれば彼女は突然嬉しそうに笑った。
「クラーク君は随分と私を見ているんだね。」
「……はあ?」
何を言い出すんだまたこいつは、
へらへらと嬉しそうに喋り出すAはくつくつと笑いながら言葉を紡ぐ。
「あのね、クラーク君。私はいつも笑ってるせいなのかは知らないが、機嫌が良かろうが悪かろうが何を考えているのかわかりにくいって言われるんだ」

「…つまり、機嫌がいいのがわかったからよく見てるんだねってことか。」
そう言えばAは心底面白そうに笑う。
「そう！ふふ、クラーク君最初は迷惑がってたのに」

「それは…」
まあ、最初に離れてくれと言った事の話だろう。

…こんな嬉しそうな顔をされては、今も君を迷惑がって離れてもらうために観察してるだなんて言えない。

幼さの残る可愛らしい表情で笑う彼女を見て、少し微妙な気持ちを抱いた。

迷惑、な筈だ