ケース39:最終話 ページ39
「A〜」
「はい、カウボーイ様 なにかご用事ですか？」
Aはカウボーイ、カヴィンの言葉に振り向いて笑いかける。然し、そこにはニヤけた表情のカヴィンと庭師、エマがメモを手に立っていた。
「2ポイントで〜す」
「はいなの〜」
「……！カヴィン様！違った、カヴィンです！カヴィン！」
「はい1〜」
「そんな…消してください…言い直したじゃないですか…」
「ダメなの、もうカウントしちゃったから取り消せないの〜」
あの日からAに色々教えこまれた常識は、少し自分を贔屓する内容を混じえたりする者もいたが大体は落ち着いた。
出された案の中で最近実行しているのは名前を呼ばせる事。
もし様をつけたら1ポイント、役職に様をつけたら2ポイント。
マイナス10溜まったら罰ゲーム、と言うAにとって地獄の始まりであった。
今朝は連続して使用したせいで擽り地獄にあったし、一昨日だってただひたすら奉仕され続け何もしてはいけないという酷い目にあい とても困っているのだ。
溜息を吐いたA、眉を下げたまま カヴィンに声をかける。
「気を付けなければ…、ところでカヴィン、何のご用事ですか？」
「ないよ」
「え？」
さらり、言ってのけた言葉にAは顔を上げた。
「呼んだだけ」
「……」
彼にからかわれたせいで自分はポイントが3も溜まってしまったのだ。ふつふつと怒りが沸いて、手に思い切り力を込めて カヴィンに向かって足を踏み出した。
「…っ、カヴィン！」
「おっと、怖い怖い」
ひらり、難なく交わしたカヴィンにAは目付きを一層鋭くする。
「この！待ちやがれ下さい！」
「誰だAにこんな言葉遣い教えたやつ！」
「…元気ですね、」
「…ああ、」
「お人形のような彼女も愛らしかったのに、あんな言葉遣いを覚えてしまって…」
「……」
「一体どなたが教えたのでしょう…傭兵、心当たりはありますか？」
「ないね、…A！あいつあっちの扉から出てったから先回りしてぶちかましてやれ！」
「承知しました！ぶちかまします！」
「貴方じゃないですか！」
絹のように艶やかな髪の毛が宙を流れる。
雲一つない空のように澄んだ瞳が愛らしく細められて、陶器の冷たさを彷彿とさせるような白い肌を 汗が煌びやかに伝った。
そうして声を綺麗に響かせて、「みつけた！」と一際大きく叫んだ。
Aは、人形ではない。
使用人でもなく、
ただの 少女だ
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作者名：鯖原 | 作成日時：2019年1月19日 18時
