全肯定女子いいよ!ちゃん (ページ3)

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ケース3:医師の見解ページ3

彼女の赤い血を見た時、酷く安心してしまったの。

使用人、A。女なら誰でも憧れる美しい少女。
まるでお人形みたいね、そんな褒め言葉が良く似合う彼女だけれど彼女の性格は不気味すぎて
お人形なんて褒め言葉じゃなくて、貶しているようにしかならないのよ。

物を言えば必ず彼女は肯定する。
何か頼めば必ずこなす。
できなければ、出来るようにする。

彼女は本当にお人形みたいで、恐ろしいの。

私がそれを実感したのは彼女が屋敷内で大怪我を負った時。

リビングで大喧嘩を始めたサバイバーの二人を止めたAは、ボロボロの手をぶらんと力なく垂らして緩やかな笑顔を貼り付けて医務室に入ってきた。

「怪我を負ってしまいました。力不足で申し訳ありません」

眉を下げて笑う彼女の怪我は酷くて、見た目よりもずっと深い。ざっくりとしたその傷は、何かで切られたようなもの。
彼女のことだから「誰か止めて！」の言葉で喧嘩の中に突っ込んでいったのだろう。

「はやく、ここに座って。」
椅子を引いてあげればそこに座り、私が傷を見やすいようにか腕の方を向けた。
「お手数おかけします。」

指先から滴る赤色が、リノリウムの床に水溜まりを作る。

傷を見るために触れるだけで眉を少しぴくりと揺らす。こんな大きなキズ、どれだけ激しい喧嘩に巻き込まれたらできるのだろう。
「…ねえ、A」
「はい、なんでしょうか医師様。」

あくまで、そこまでしろという意味ではなく
ただ、少し抑えてほしいというだけだったのに
その言葉を聞いた彼女はまるで何も無かったかのように平然とそこにいたのだから私は怖くて手を止めてしまいそうになった。

「ここはちゃんとした設備が揃っている訳では無いから、治療をするけど結構痛みも伴うと思うの。…無理なお願いだと思うけれど、激しく暴れたりなんてないようにね…」

「はい、承諾しました。」
笑顔でそういったっきり、彼女はまるで人形のように笑顔を動かさず一言も発さずに治療を終えた。

私の指が傷に触れても、
やや激しめに糸を肌に通しても
なにも言わないなにも動かない彼女が怖かった。

あんな患者、二度とみたくないわ。
そう思った私は医師として失格なんでしょうね。