全肯定女子いいよ!ちゃん (ページ1)

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ケース1:幸運児の見解ページ1

その子と初めて出会った時の印象を尋ねられたら、僕らはきっと口を揃えて「いい子」と言うのだろう。

「私はAと申します、使用人をしていました！」

そう元気にはきはきと告げて、スカートの裾を摘みあげ優雅に一礼。
一枚の絵の中から出てきた時のように、楚々とした少女。可愛らしく服を揺らしてその髪の毛を耳にかけた。

如何にも、日本のことわざで言う「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉が似合う人だった。
誰もが彼女を羨み、そして尊敬して、好意を向けた。

それが歪んだのは突然のことではなく、少しずつ着実にだ。

使用人というのはメイドを指す言葉。
なんでも器用にこなす彼女は、頼られることも多い。
実際に僕だって何度もお世話になったことがあった。

けれど、彼女はあまりにも人のために物事をこなし過ぎるのだ。

僕の話で例えるとしよう。

「Aさん、こんにちは」

「幸運児様、こんにちは」
彼女は誰に対しても正しい言葉遣いを忘れない。それは使用人としての名残だろうし、だれも口は出さない。

「今日、僕昼食を食べずに行くから僕の分のご飯を残しておいて欲しいんだ…頼んでもいいかな？」

その日は僕がゲームに参加する日。
ご飯は放っておけば無くなってしまうので、きっと僕とゲームに参加する他のサバイバーやハンターも誰かに残しておいてもらうよう頼んでいるだろう。

偶然廊下ですれ違ったAさんにそう頼めば、快く彼女は承諾してくれた。
「はい、了解致しました！」
笑顔でそう応える彼女に、僕も安心して試合に行くことが出来たが問題はその食事にあった。

「これ、どうしたの…？」

帰って来て覗き込んだリビング。
テーブルには豪華な食事が並んでいて、一緒に参加したサバイバー達は苦笑いで普段の食事を口にしている。

「幸運児様がどれくらい食べるのか分からなかったので、余分に食事を取っておいてしまったら他の方もお困りになると思ったので私が直々に準備させて頂きました。」

少しやりすぎなその行為に僕は、引いてしまった。

料理は程よい温かさで美味しかったけれど、それを楽しむ気持ちがその時の僕にはなかったのだ。

あの日から、彼女に頼み事をしたことは無い。