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感情が昂りすぎてうっすらと目の中に涙がたまる感覚を覚えた、トントンさんはやっぱり申し訳なさそうに、すまんなあと言う。
ただひたすらに目の前の優しい人に苛立ちをぶつけてしまった、人間、感情をぶつけて、それをそのまま受け取られると落ち着くようだ。
すぅと頭の中の熱がなくなっていくように感じて、ごめんなさい、と目をそらしながら謝る。
少しの沈黙のあとトントンさんが口を開いた
「...せやから、決めるのはもう少し時間がたってからでかまわへん、でももう、ここで住むしかない、よな?家はもうでてきてはるやろうし、やけど、ごめん、やっぱり男の振りはしてもらわなあかん」
そうだよな、だって、そうしないとこいつは誰だになってしまう、ストックホルム症候群、というわけではないが、今ここを出てしまえばどこで過ごせばいいかわからなくなってしまうし、女だっただろうという声がでてしまうだろう
「はい...」
「せやから、明日の朝、その、綺麗な髪やけど、切らせてもらって、昼くらいからここの奴と、家の案内するわ」
ああ、そういえばあんたの部屋を教えなあかんな、ついてきてやと立ち上がる彼につられて、延ばされた期限、それを考えながら私も立ち上がった。
「とりあえず必要なもんとかは置いてるから、気に入らんかったり、ほしかったりするもんがあったらなんでも言うてや」
和。畳。井草の香り。障子。大きな掛け軸。飾られた花。壁に嵌め込む型のテレビ。一人には大きいであろう冷蔵庫。流石に下着は少ないので、買いにいかねばならぬだろうが、なにも困ることのない生活空間がそこにはあった。それと、なぜか知らないけれど床の間に置かれたいやそんなまさか本物とは思わないけれど思いたくないけれど、刀。おーまいがっど。
「いや、十分、です」
「そうか?遠慮せんでええんやで」
「ほ、ほんとに、大丈夫なんで、その、後から必要になったらお願いします」
おん、わかった。風呂はまた風呂の時に教えるな。優しげに笑顔を向けられて、初めましてのお兄さんと別れ、初めましての部屋と向き合う。
やはり一人には大きい部屋の広さと、同様のソファーに座り込んで、情報量の多い今日を一旦シャットアウトした。
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white - 面白いです!私も文才欲しい・・・(T0T) (2020年1月5日 14時) (レス) id: 76d73b59f0 (このIDを非表示/違反報告)
どこまでもドア(プロフ) - いやん、おもちろい…………! (2020年1月4日 22時) (レス) id: 8785b7590e (このIDを非表示/違反報告)
にょん(プロフ) - しよりんさん» ひゃ〜!お恥ずかしい...!ご指摘いただき有難う御座います〜!直させていただきますね! (2019年12月26日 0時) (レス) id: 4cc56d5669 (このIDを非表示/違反報告)
にょん(プロフ) - ハルさん» ハル様、嬉しいお言葉有り難く頂戴致します。素敵なご感想を頂きまして誠に嬉しく思います、只今少しばかり忙しく、更新ができていない状態なのですが、そのお言葉を励みに頑張りたいと思います、本当に有難う御座います(><) (2019年12月26日 0時) (レス) id: 4cc56d5669 (このIDを非表示/違反報告)
しよりん(プロフ) - 男のふりをするの漢字が違います。降りではなく振りです。 (2019年12月24日 12時) (レス) id: db32c84ab5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にょん | 作成日時:2019年11月17日 2時