お名前なんですか。 (ページ4)

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カタカタ、Wordを開いてタイピング練習をする、といってもウィンドウとキーボードを交互に見る姿は少々滑稽であろう

「あ、ほら、」
「え？」
「指、ちゃんと定位置おかんと早くなれませんよ」
「ぅ、わ」

急に話しかけられ、指を真ん中の列に置かれる。触れられた部分が淡く暑くなっていくのはなぜなのか、多分パソコンが熱いから。

いつもありがとうございます、何年生なんですか

ところで、急に聞いてしまうんですけど、お名前って、なんですか。

口の中に溜まっている言葉、何度も反芻して、ぱ、と口を開くけれども漏れでるのは空気ばかりであり、言いたいことだって沢山あるのに、また心の中にぽつんと取り残されて今日も何も言えないままで終わってしまう。

ふと、パソコン教室に笑い声が響いた。

釣られるようにそちらを見れば、コネシマが独特な笑い方で笑っている、また馬鹿なことやってんだなあって見ていると、私が見ていることに気づいたのか、コネシマにひらひらと手を振られ、私も軽く振り返した。

紫くんが、少々不機嫌な顔になっていることも知らないで。

終わりのチャイムが鳴れば、下校していく生徒たち

「またね、木曜日」
「あっ、はい、また...」

紫くんに、紫くんにまたねって言われてしまった...！！あり得ないほどルンルン気分で、逆上せ上がった私は、パソコン室で少しだけボーッとしてしまった。なんてこった...これは、ほんとに、時間を忘れるくらい楽しい気持ちになってしまった。

ほう、とほんのり暖かくなった頬を冷たい手で冷やしながら、寮への道を進む。自分の寮の部屋のドアを開こうと、内開きのドアノブを掴んだ瞬間、ぐんっ！と引っ張られて体勢を崩す

「おわっ！」
「ん？」

ああ、丁度扉を開けるタイミングが被ってしまったのか、綺麗に頭を扉にぶつけた

「、い"っ！」
「おわ！く、ふ、ごめんごめん、ひひっ」

そこには、ルームメイトであるゾムが面白くてたまらないという表情で立っていた