計らい。 ページ1
あんずside
時はお昼休みに遡る。
教室の扉が荒々しく開き、隣のクラスの大神くんに声を上げて呼ばれた。
｢おい、あんずのやついるか？いるなら出てきやがれっ！｣
転入当初はかなり怖かったが、実は優しい人であることを知ってから自然と怖くはなくなった。明星くんと一緒にいるのを見たのもあるかも。
考えつつ呼ばれたので出向く。
｢えっと、私に用事かな？｣
｢おう、あんず。吸血鬼ヤロ〜がお前のこと呼んでたぞ。放課後に軽音部の部室に来いだとさ。｣
それだけ言うと彼は何処かへ行ってしまった。
そして今に至る。
｢えっと、朔間先輩？私は軽音部の部室と言われたはずなのですが…どうしてガーデンスペースにいるのでしょう？｣
すると笑いながらゆったりと話し始めた。
｢すまんのう、嬢ちゃんや。忙しいのにわざわざ老人のために時間を割いてくれてありがとう。部室だと、ほれ、わんこがうるさいじゃろう？｣
確かに、と納得して話を進めてもらう。というより、大神くんが朔間先輩のお願いを聞いたことが不思議である。
｢ああ、ちと貸しがあってのう♪その話をすると割となんでもいうことを聞いてくれるのじゃよ｣
そのレベルの貸しとは…なんだか恐ろしいような。
｢心配するほどの事じゃないから安心せい。ただ口を滑らすとわんこが本気で怒りそうじゃからのう…割愛しておこうかのう。嬢ちゃんも忙しいじゃろうし。｣
さっきから私の考えていることを見抜かれて話されているので口を挟む暇がなかったが。
｢いえ、ご心配なく。朔間先輩は恩人ですから…。それで、お話とは一体…？｣
するとそこへ緩く響く声が飛んできた。
｢あっれぇ〜？そこにいるのって朔間さんとあんずちゃん？！いやぁ、朔間さんも隅におけないなぁ〜｣
お兄さん悲しいよ、俺のお誘いは断るのに〜とかなんとか。
｢お久しぶりです、羽風先輩。｣
一応先輩だし、お世話にもなっているので挨拶しておくが…距離が近すぎて少し萎縮してしまう。綺麗な顔立ちのせいでもあるのだろう。
｢これこれ、羽風くん。ナンパは後にしてくれんかの。仕事の話をするのじゃ。｣
｢え、なになに？あんずちゃんがプロデュースしてくれるの？｣
ああ、そういうことか。
そう言いながら朔間先輩から手渡された資料を眺める…しかし。
｢あの、この日は別の仕事が…｣
申し訳ないが断ろうとすると不敵な笑みがあった。
｢知っておるよ。…で、本題じゃが…｣
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作者名：ぽあぷるーじゅ。 | 作成日時：2018年2月12日 13時
