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ラウ「…Aさん」
一瞬、残業の疲れで幻を見ているのかと思った。
『まだ残ってたの?』
ラウ「ちょっと、ミスしちゃったんです」
『そっか』
ラウ「Aさんは?」
『忘れ物しちゃって。私、よく忘れ物しがちなの(笑)』
彼女は、たまに抜けているときがある。
忘れ物を手に取り、彼女は言う。
『ラウールくん、お腹空いてない?』
ラウ「空いてます、けど…」
『じゃあさ、うちで食べない?(笑)』
ラウ「え、」
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ラウ「おじゃまします」
『どうぞ(笑)』
女性らしい部屋だ。
彼女はカレーを振舞ってくれた。
前日から寝かせてあった特製のカレーらしい。
『1人じゃ食べきれない量作っちゃったから(笑)』
ラウ「いただきます」
1口食べる。
ラウ「美味しいです」
『ほんと?よかった〜(笑)』
そのとき、暖かい部屋で温かい食事をして、彼女の笑顔を見て、僕は涙が零れた。
『…』
ラウ「…あ、ごめんなさい」
ゴシゴシと涙を拭く。
『いいんだよ。我慢しなくて』
ラウ「…情けないですよね、僕」
『そんなことないよ。私も仕事でうまくいかなくて泣いたこと、何度もあるから(笑)』
ラウ「Aさんがですか…?」
『うん。だから大丈夫。次に活かせばいいんだよ(笑)』
カレー冷めちゃうよ、と彼女が言う。
僕はカレーが冷めてしまう前に、涙を流しながらカレーを食べた。
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作者名:ayane | 作成日時:2021年10月27日 7時