透明なラベンダー。３ (ページ22)

今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:120,900 hit

星が煌めく夜にページ22

＊

金木犀の時期が過ぎると、本格的に寒くなった。

日が落ちるのも早い。

準備を整え外に出ると、西の空にオレンジ色から濃紺へと鮮やかなグラデーションが見えた。

阿部さんと待ち合わせた場所に行く。

郊外にある場所で、スマホのマップを見ながらたどり着いた。

そこには紺色のチェスターコートを着て、手に息を吐きかけて寒そうにしている阿部さんが立っていた。

彼は私に気づき、ニッコリと微笑む。

『お待たせしてすみません』

阿部「いえ、少しわかりづらい場所でしたが、大丈夫でしたか？」

『はい、マップを見ながらなんとか(笑)』

阿部「街中は明かりで星が見えづらいので、この辺りがちょうどよくて」

『なるほど、確かにそうですね』

阿部「本当はもっと山間部に行った方がいいんでしょうけど、寒すぎるのも苦手で(笑)」

『わかります(笑)』

緩やかな坂道を上り、高台に出た。

『ここならよく見えそうですね(笑)』

阿部「人も少なくて、お気に入りの場所なんです(笑)」

『よく来るんですか？』

阿部「はい。空を眺めてただボーッとしたい時や、考え事や悩み事がある時なんかもここに」

『悩み事…？』

阿部「人間、生きてれば悩み事があるのは普通なんですけど、ちょっと落ち込んだりする日もあったりして」

『…』

阿部「…あ、すみません、こんな話」

『いえ、そういう話も聞けてよかったです』

阿部「…」

『阿部さん、言ってたじゃないですか。"自分のことをよく知らない人に話すと気分が楽になるって言いますからね"って』

＊