桜が舞う頃、君は。３ (ページ14)

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『ﾊｧｯ…ﾊｧｯ…』

阿部「刀を預かっておくべきだったかな。まあ、俺には歯が立たないだろうけど」

『…っ』

刀を強く握る。

阿部「部屋に布団を敷いてあるから、ゆっくり眠るといいよ」

『よくもそんなことが言えますね…っ！』

彼は、ああそうだ、と振り返る。

阿部「ここは山奥の屋敷だし、特殊な結界を張ってるから追跡できない。だから誰も助けには来ないということは伝えておくよ」

『…』

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その夜。

横になっていても寝付けるわけもなく、布団の中で目を開けてただ静かに息をしていた。

外に気配を感じ起き上がると、障子の外に人影があった。

『ラウール、くん…？』

ラウ「…うん」

障子の向こうで、彼はそう答える。

『…どうしたの？』

ラウ「別に用はないんだけど…様子を見に」

『ひとつ、聞かせて』

ラウ「何？」

『あなたは…初めて会ったときから、私のことを知っていたの？』

ラウ「いや、本当に知らなかったよ。だから、あの人がお姉さんをここに連れてきたときに驚いたんだ」

『…そっか』

複雑な気持ちになる。

ラウ「僕が悪者だって知って、軽蔑した？」

『…え？』

ラウ「せっかく優しくしてくれたのに、ごめんね」

『待って、』

ラウ「でももう、戻れないんだ…！」

『ラウールくん！』

障子を開けるも、彼の姿はなかった。

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