君と私とチョコレート。

＊ ページ19

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仕事納め。


同僚と別れ、1人で歩いていた。


『あ、』


会社に手袋を忘れたことに気づく。


戻らなきゃ…


阿部「Aちゃんっ」


そのとき、阿部さんが私を呼ぶ声がして振り向いた。


『阿部さん？』


阿部「ハァ…ハァ…これ、Aちゃんの忘れ物だよね…？」


彼は息を整えながら私の手袋を取り出す。


『は、はい！すみませんわざわざ…！』


阿部「よかった〜(笑)」


彼はホッと笑顔になる。


…この手袋を届けるために、わざわざ走って追いかけてくれたなんて。


『あ、あの…本当にありがとうございます』


阿部「ううん、それがないと困るよね。俺も寒がりだからよくわかるんだ(笑)」


じゃーん、と言って彼は自分の手袋を取り出す。


『阿部さんも手袋持ってたんですね(笑)』


阿部「うん、これがあるのとないのとでは大違いだから(笑)」


彼は手袋をはめて、パッと手を開いてニコッと笑う。


阿部「それに、Aちゃんに挨拶できてなかったから」


彼はピシッと姿勢を正す。


阿部「Aちゃん、今年もお世話になりました。来年もよろしくね(笑)」


『ありがとうございます。こちらこそ大変お世話になりました。来年もよろしくお願いします(笑)』


阿部「よいお年を(笑)」


『阿部さんも、よいお年をお迎えください(笑)』


阿部「それじゃっ(笑)」


彼はバイバイ、と手を振り、私に背を向ける。


私は手袋をぎゅっと握りしめながら、その背中を見つめていた。


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