少女ハ花カラ夜叉トナル ページ48
キンッ キンッ キンッ......
夜叉同士の刀と刀がぶつかっていた。何方の速度も互角、白雪の刀が尾崎の金色夜叉に猛威を振るい、また尾崎の夜叉も泉の夜叉白雪に刀を振るい続ける。
激しい攻防戦が繰り広げられ、周りに有った柱やベンチ迄もが刀の餌食となっていた。
そんな中、泉の瞳は真っ直ぐに尾崎へと向けられる。暫くの間、二人は静かに互いを見詰合っていた。其の静寂を破り、先手を取ったのは泉である。
尾崎との距離を一瞬で詰め、懐に入れていた小刀を抜く。
だが、尾崎は彼女の動きを読んでいたのか仕込み刀で応戦した。
「見よ! この刃がそなたの本性じゃ、邪魔者と見れば直ちに殺す......交渉も脅迫も無い」
“ まるで夜叉じゃ ”
尾崎の科白を聞いた泉の心臓が、ドクンと大きく脈を打つ。
「違う–––––––!」
小刀を大きく振るい、尾崎の刀を払い除けると泉は彼女から距離を取った。小柄な体格からは想像が出来ない程の身のこなし、一瞬の隙を突きギリギリまで殺気を放たず相手を狙う。
尾崎は矢張り、彼女は闇の世界で生きるべきだろうと確信した。
何処か哀しげに、尾崎は泉の姿を瞳に映す。今の泉はかつての自分に迚よく似ていた、似ていたからこそ彼女は光の当たる世界では生きていけない。尾崎は刀を振るう手を止めると、泉に向かって語りかける。
「......のう 鏡花や、そなたの気持ち......判らぬでもない」
光の世界に焦がれる気持ちは、尾崎も判っていた。だが泉は生来の暗殺者、幾ら光を希求しても無理なものは無理なのだ。
明るい光の熱量に、孰れ焼き殺されてしまう。
「何故私に判るか? 簡単じゃ 何故ならかつて––––––」
『逃げよう紅の字』
『二人で生きるんだ』
『僕と君ならば どんな場所でも–––』
涙を流し、我武者羅に光を求めた時が尾崎にもあったのだ。薄い瞼を閉じ、尾崎は己の過去を思い出すとフッと自嘲気味に嗤う。
「同じく光に焦がれ 焼かれて落ちた女が居った故」
泉は瞳を見開いた。
尾崎が同じモノを求めていた時があったなんて、知らなかったのだ。
「でも そうだとしても......」
震える両手をギュッと強く握り、泉は足掻く。もう二度と
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ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます! いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます!嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね!羨ましいです! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます!成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です! (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております!笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 初めまして!いつも!? え、え、有難うございますっ 楽しく!?...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね!感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年5月27日 11時