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知ラナイ頃ニハ戻レナイ ページ45

迚静かな、だけど凛とした声が尾崎の行動を制した。強い風がザアッと吹き、泉の長い黒髪が(なび)く。
彼女は眉を下げ、薄い唇をぎゅっと噛み締めたら少し震える声で云った。


「判った......戻ります、だから」


これ以上彼を傷付けないで


尾崎の望みは泉が再び組織に戻る事。
自分が組織に戻ると云えば、此れ以上中島が傷付けられる事は無い。自分の所為で誰かの命が奪われてしまうのは厭だった、彼女の言葉を聞いた尾崎の方は、にっこりと穏やかな笑みを見せる。


(すべ)てそなたの為じゃ 鏡花。孰れ判る時が来る」


ユラリ、尾崎の背後から金色夜叉が姿を現わすと、中島の腹部を刺していた仕込み杖となっている刀を引き抜いた。
無理やり引き抜かれた事により、出血した彼は其の侭地面にドサリと倒れ込む。身体中が痛み、一歩も動かなかった。

そんな中島には目もくれず、尾崎は泉に柔らかな眼差しを向け、手を伸ばす。泉は虚ろな表情で尾崎の手を取ればゆっくりと歩き出した。
中島は泉を扶けねばと身体を起こすものの、鉛の様に重く、傷を負い過ぎた身体は云う事を聞かない。

それで善いのか?
此の侭、唯黙って見送るしか出来ないのか?


「ぐ......!」


善い訳がない。
朦朧とする意識の中、彼は云う事の聞かない身体を起こす為に腕に力を込めた。だが、彼は二人の様子が少々可笑しい事に気付く。

歩みが止まったのだ。尾崎のさしていた番傘が地面にトサッと音を立てて落ちる。


「......!!」


ほんの一瞬の出来事だったのだ、泉が懐に所持していた小刀で彼女の着物の帯部分__腹部を狙い刺した。ギリギリまで感じさせない殺気、尾崎は間一髪のところで小刀を素手で掴む。

掴んでいなければ、完全に入っていた。
掌から流れる落ちる血は気にも留めず、尾崎は小刀を払い除ける。其れを察知した泉は小刀を引き抜き、ふわりと軽い身のこなしで彼女から距離を取った。


「流石じゃ......鏡花、まるで殺気を......感じなんだ」


仕留められはしなかったが、幹部である尾崎に傷を負わせるなど、並大抵の暗殺者では出来ない。泉は小刀を懐に仕舞うと、携帯電話を取り出した。
其れは泉が首から下げていたモノとは違う、尾崎の携帯である。


「明るい世界を見た。知らなかった頃には もう戻れない」

「......それを使うな 鏡花、使えば そなたは」


震えた。
けれど、もう其れしか道が無い。


「夜叉白雪____ 私の敵を倒して」

祝宴ノ始マリト葩ノ微笑→←瞳ニ映ル世界ノ色ハ



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設定タグ:太宰治 , 文豪ストレイドッグス , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます! いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます!嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね!羨ましいです! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます!成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です! (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております!笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 初めまして!いつも!? え、え、有難うございますっ 楽しく!?...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね!感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年5月27日 11時

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