太宰夫婦は何処か冷めている。【文豪ストレイドッグス】

遊戯理論ト本当ノ鬼 ページ27

皆の顔に絶望の色が浮かび上がる。
コレが勝ち目のない遊戯だと分かった瞬間、人虎の心にバキッと皹(ひび)が入り、折れかけた音が聞こえた気がした。


「どうしたの?お遊戯はこれからが本番よ! 貴方は鬼遊の天才みたいだけど＿＿＿この状態で何分心が保つかしら(・・・・・・・・・・・・・)?」


確かに、状況は誰がどう見ても絶望的だ。使い道の分からない不気味な鍵、追いかけてくるアンの存在。今はまだ避けれていても、鍵という唯一の希望が打ち砕かれた人虎の心はもう限界だろう。

私がそんな事を推測していたら、それは如何やら中っていた様だ。
人虎はモンゴメリ達に背を向けると、黒い扉に走り出す。


「中島さん......」

「すみませんッ! 僕にはもう......＿＿」


突然遊戯を放棄をし、走り出す彼を見たモンゴメリは驚愕して、深緑色の目を見開き「お友達を捨てて逃げる気!?」と、叫んだ。
人虎の手がドアノブを掴もうとした其の瞬間、また予想外の出来事が起きた。

白衣の男性が、彼の首に掛かっていた飾帯(リボン)を引っ張ったのだ。


「駄目だよ少年、敵はあっちだ」


飾帯を引っ張られて転ぶ人虎、急な展開に頭が追いつかなくポカンとしているモンゴメリ、私は男の方を見ると、思わず口から溜息が洩れた。
転んだ身体を起こし、ケホッと喉を抑える人虎に向かって男は弱々しげに笑みを浮かべると、科白の続きを言う。


「この場合(ケエス)での逃亡はお勧めしない。その......高が街医者の言葉を信じて貰えるならばだが」


男は人虎に諭す様に、そのドアから逃げれば記憶を失う事の他、敵の手管も捕らえられた仲間の危機も忘れてしまう事、敵はこれからも進撃を続ける事を話した。

高が街医者にしては、随分と俊敏な動きだったけど私は敢えて何も言わずにいる。


「佳い事を教えよう。遊戯理論研究では 危害を加えて来た敵には徹底反撃を行うのが論理最適解とされている」

___二度と反撃されぬよう
此処で徹底的に叩くのだ


勝利を確信したと、高を括っている敵程に容易いモノは居ない。
詰まり、まだ状況を逆転する為の打開策は残されていると云う事だ。
圧倒的に相手の方が有利、不利な此方に希望は残されていないと誰もが感じるのだけど、却説如何動く?


「面白くなってきたじゃない」

覚悟ヲ決メタ虎ノ少年→←少年ノ絶望ト女ノ静カナ移ロイ

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