終幕ト宵ノ誘イ ページ31
そろそろ、幕引きの時間かしら?
モンゴメリは形成逆転された事により、精神的に打撃を与えられただろう。
更に、追い討ちをかける様に中島に己の異能の弱点を暴かれてしまった。手の内を敵に見られてしまうほど、最悪な状況と云うモノは無い。
もう彼女はこの状況を変えられないのだ。
「異能は便利な支配道具じゃない、それは僕が善く判ってる。自分の創った空間に死ぬまで___
死んだ後も自分の創りだした空間に囚われ続けるなんて、彼女には耐えられないだろう。
寂しがりやな少女にとって、“孤独”は死ぬ事よりもずっと辛い。
「あたしは......失敗するわけには」
「今から手を離す。決断時間は扉が閉まる一瞬しかないよ」
相手に考える時間を与えない、焦らせて、焦らせて、最後には追い詰める。片方の手で無数の手の力に抵抗をしているのだ、その手を離したら二人とも
全ては彼女の決断に任せられた。
「だめ 待っ......」
科白を言い終える前に、中島は異能を解除して手を離した。
中島とモンゴメリが室の奥に吸い込まれていく。彼女が何方を選ぶのか、私は一度瞳を閉じ、息を吸うと再び瞳を開ける。
***
「ふふっ 予想通」
私達は皆、元の世界に戻って来た。見覚えのある建物と交差点を瞳に写し、微かに口の端を釣り上げる。
あの一瞬では答えを考えるなんて出来ない。思考さえも、モンゴメリは中島によって奪われてしまったと云う訳だ。
良い時間だった。
情報も集められたし、組合の異能が判った事は何よりも大きな成果だろう。
「却説、そろそろ帰らなくちゃ」
一般人は、自分達が何故交差点の真ん中で倒れていたのかは覚えていないだろう。中島と谷崎は人質になっていた探偵社員の無事を確認したり、他にやる事が有りそうだ。
私は気配を断ち、周りの人達の中にゆっくりと溶け込むと其の場を後にしようとする。
「A君」
「............!」
そんな私を呼び止める人物が居た。
「もう行くのかい?」
「仕事が有りますから......」
「残念だねぇ、久しぶりに会えたからゆっくりと話したかったのだけど」
私は一言「すみません」と、謝罪をした。
「行く前に、一つお願いだ」
“久しぶりに、私の名前を呼んでおくれ?”
随分と変わったお願いだ。
私は相手の方を向き、口だけを動かすと、今度こそ其の場から立ち去った。
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ミサぽん(プロフ) - カエデさん» コメント有難うございます! いやいや、そんな......羨ましいだなんて、もっと上手くなりたいと思っている位ですよ、ですけど 有難うございます!嬉しいですっ (2019年7月7日 17時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
カエデ - こんにちは。読ませて頂きました。ミサぽんさんって絵がお上手なんですね!羨ましいです! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 611e70016f (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます!成る可く早い内に、続編を作成します。いつも読んでくださり、感謝感激です! (2019年6月16日 9時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - こんにちは。引き続き続編も楽しみにしております!笑 (2019年6月16日 9時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 初めまして!いつも!? え、え、有難うございますっ 楽しく!?...嬉しくて涙が出てしまいます。これからも更新、頑張っていきますね!感想、有難うございます。 (2019年6月9日 22時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年5月27日 11時