夢 ページ20
ここは...何処?
頭がズキズキと脈を打つように痛む
私はこんな所で何を...
「早く戻らないと.........血?」
少女「貴方が殺した」
「!」
少女「貴方が殺した。自分の本能に抗うことは出来ない。殺すだけ。それが私の運命。」
「ま、待って!!」
「ッ待って!!!」
━━ ━
「ハァハァハァ...」
唐突にAの意識は現実に引き戻される
ベッドに横たわる自分の身体から伸ばした手は見慣れた天井に向けられていた
「またか...」
何度も繰り返し見る夢に溜息をつくA
どうやって殺したのか記憶はない
気が付くと目の前には横たわる死体と
割れた鏡に映る血だらけの少女
あれは恐らく幼い頃の自分で、鏡の中からいつも同じ言葉を口にする
消えかける自分の姿を捕まえようと鏡に手を伸ばすと太陽の様に眩しい光に包まれる
それは一瞬の出来事で次の瞬間には真っ赤に燃え盛る故郷の景色に変わる
最後には自分自身も炎の中へと消えていく
いつも夢はここで終わり、額にかいた汗とまるで現実の様な手に付いた血の感覚の不快感で目覚める
「今、何時...」
太陽光に長く当たることの出来ない体質であるAの為、海賊船に潜水艦を選んだのはロー
深海を進む船の中は昼夜問わず暗かった
サイドテーブルにあるはずの時計に手を伸ばすA
手探りで時計を探すもなかなか手に取る事が出来ない
仕方なく上半身を起こそうとした自分にのし掛かる重みにそれを阻止される
後ろを振り返るとAのお腹にタトゥーだらけの腕を回し彼女より何十センチも長い足を絡みつけて眠るローの姿があった
ローとAが同じ寝床で過ごすことは昔から自然のことだった
子どもだけで生きて行かなくてならなかった時代
お互いの不安と悲しみを埋めるように身を寄せ合って夜が開けるのを待った
大人になってもそれは変わらず何故かお互いが傍に居ないと十分な睡眠をとることが出来なくなっていた
習慣とは不思議なものだとAは思った
ローの拘束から抜け出そうと身を捩るが、その度に絡みつく手足には力が込められているように感じた
「ロー?起きてるの?」
ロー「...」
ローは声掛けに反応する様子はなく静かな寝息をたてる
Aは諦めてローと向き合う形で布団に戻った
普段は帽子で隠された少し癖のある髪に触れる
今では死の外科医と恐れられるローだが、昔と変わらない寝顔に自然と笑みが零れた
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作者名:ゆんゆ | 作成日時:2016年10月3日 20時