茶会のベルが鳴る (ページ5)

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五個ページ5

お茶を飲み干して、また次の機会に。とお辞儀をして岸辺さんの家を後にした。
あんなこと言ってもまだお茶会がしたいと言うとは思わなかった。普通なら怒るんじゃないかな。わからないけれど。
律儀に岸辺さんの家に行かなくても良い。岸辺さんは私の家知らないわけだし、私が行かなければこの関係は直ぐに終わる。終わらせないのはやっぱりどこか岸辺さんに期待してるんだろうか。

「好奇心、かな」

好奇心は猫を殺すとかなんとか言うけど、岸辺さんにとって私も猫みたいなものかもしれないな。
次のお茶会はもう少し、岸辺さんが喜びそうなものでも持っていこうかな。

「露伴先生〜！頼まれてた資料です〜！先生〜！」

玄関から担当の大きな声が聞こえる。何か言われそうでカップを片付ける。許可もしてないのにズカズカと部屋に入り込んで、泉君はいつもの調子で言った。

「せんせ〜！いるなら声をかけてくださいよ！」
「君なんだその資料は」
「え？先生がほしいって言ったやつですよ。これと、これ」

そう言って渡される本を見ても身に覚えがない。お生憎様またこの担当がやらかしたんだろう。

「いいや頼んでないね」
「えー？頼みましたよ、私だってお電話もらって急いで来たんですよ」
「電話？」

その言葉にそうですよ？と泉君は頷いてみせた。

「急いで……ってことは君はついさっき電話をもらったってことか？」
「勿論ですよ！携帯電話からじゃなく家の方からされたじゃないですか」
「何時ごろだ」
「えーと、15時です！私ちゃーんとメモしてますもん！」

そんな筈はない。だってさっきまで。
そこまで考えて、彼女が持ってきた本に興味がわいた。誰が何の為に頼んだのかわからない本に。

「で、その本は」
「先生が言っていた場所に確かに置いておりましたよ？紙袋のままで。周りに誰もいなくて迷ったんですけど、中に入ってた手紙にちゃーんと先生の名前があったので持ってきました」

そう言って紙袋から手紙が出される。そこには確かに『岸辺露伴様』と書かれていた。見覚えの無い字だ。問題なく読めるけど、癖のある字に感じる。

「電話で僕は他に何か言っていたか？」
「え？えーと……」

泉君の話す内容を聞いて、なるほど。と僕は携帯電話を取り出す。そしてそのままAにメールを打った。
多分彼女なら乗るだろう、と思いながら本を受け取ればやけにニヤニヤしている編集が言った。

「先生〜まさか！恋人ですか？！」

こう言う時ばかり勘の良い編集だ。