茶会のベルが鳴る (ページ3)

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三個ページ3

「A、君ってさぁ理解してないんじゃないか？」

口の中がクリームでいっぱいなので、首を傾げる。カスタードをぺろり、と拭えば、岸辺さんはまた大きな溜息を吐いた。

「僕は君を好きだからお茶会したいって言ってるんだ」
「……ライク？」
「ラブの方だって君このくだり毎回するつもりか？」

エクレアのクリームが出ている方を上にしながら、私は紅茶を一口。言葉を探しながら、でもですね、とカップを置いた。

「好きならもっとあると思いますよ、デートするとかプレゼン
ト、あのーなんていうんですか。アプローチの仕方が」
「じゃあ君僕と外に出かけてくれるのか」
「出ません」
「僕が物をあげたら受け取るのか？」
「受け取りません」
「告白したら首を縦に振るのか？」
「横に振ります」
「じゃあ駄目じゃないか！」

かん、とカップを強く受け皿に置く物だから、まぁまぁと岸辺さんを宥める。

「だって純粋にそのー、岸辺さんにドキドキしないんですよね」
「どきどきぃ？」
「ほら、恋ってそういうもののはずでしょ？」

最後のエクレアを食べて、その指を拭く。口の中を飲み込んでから、包み紙を小さく折る。

「魅力の話か」
「いいえ、好奇心の話です」

包み紙が三角に折られる。

「好奇心？」
「はい、好奇心」

岸辺さんの手がエクレアに伸びる。今度は私が話し手ってわけだ。

「ドキドキするでしょ？不思議な事、わからない事。岸辺さんは漫画家だからわかりますよね、リアリティってやつを求める時、面白いを嗅ぎ分けるのは好奇心だって」

頷きも返事もないけど、岸辺さんは私の目を真っ直ぐ見ていた。

「それを岸辺さんに感じないだけです。私が岸辺さんに好奇心がない。からドキドキしない。まぁ多くの人にそうです。恋って好奇心には勝らないんです」

そういえば、岸辺さんは目を逸らさずに言った。

「でもそれなら僕に好奇心があったとしてもそれを知れば好きでなくなるって事か？」
「それを知って、初めてこの人と一緒に居たいと思うかもしれませんよ」

エクレアを包んでいた紙が菱形になる。掌の中で小さな紙を小さく折っていく。