9話 ページ9
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不破湊side
本屋さんに着くなり、彼女は目を輝かせて店内に入って行った。
俺は彼女の後に続いて中に入る。
すると、彼女が1冊の絵本を手に取った。
表紙には可愛らしい動物たちが描かれている。
どうやら、うさぎの出てくる童話のようだ。
それをじっと見つめる彼女を見て、俺も自然と笑みがこぼれる。
彼女に気付かれないようこっそりとその様子を見守り、少し経った頃、声をかけた。
「その本買うん?」
そう言うと、彼女は恥ずかしそうにしながら小さく頷いた。
そして、続けてこう言った。
『妹に買ってあげたいの。この前、友達と喧嘩したみたいで落ち込んでるから、元気になって欲しいなって……』
きっと、優しい姉なんだろうなと思うと同時に、少し寂しさを感じた。
家族の話をする時の彼女はどこか悲しげな表情をしているからだ。
その理由はわからないけれど……
そんなことを考えていたら、いつの間にかレジに向かっていた。
慌ててその後を追いかける。
会計が終わり、袋を受け取った後、再び彼女と手を繋ぎなおす。
そして、俺たちは再び歩き始めた。
少し歩くと、先にクレープの屋台が見えてきた。
ちょうど小腹が空いていたので、2人で食べることにした。
「Aちゃん、何味にするん?」
メニューを見ながら聞くと、彼女は迷ったような顔をした後、こう答えた。
『苺味にする…!』
瞳をキラキラさせてそう答える彼女を微笑ましく思った。
「じゃあ俺はバナナにしよっかな〜。」
2人分の代金を払って注文する。
『あっ、湊くん!私も払うよ??』
財布を取り出そうとしている彼女を止める。
だって、女の子に払わせるなんてカッコ悪いやん?
そう思いながら、にっこりと笑ってみせる。
『あ、ありがとう……』
困ったように笑う彼女の頭を撫でてあげる。
それから数分待った後、頼んでいたものができたのでそれを受け取り、近くのベンチに腰掛ける。
美味しそうにクレープを食べる瑠璃ちゃんを見て、なんだか幸せな気持ちになった。
『湊くんっ!これ美味しい…!』
満面の笑みを浮かべてこちらを見る。
それがあまりに可愛いくて、少しドキッとした。
「あ、Aちゃんクリームついてんで?」
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作者名:おふとん天使 | 作成日時:2023年7月11日 8時