検索窓
今日:19 hit、昨日:0 hit、合計:9,609 hit

9話 ページ9




不破湊side

本屋さんに着くなり、彼女は目を輝かせて店内に入って行った。

俺は彼女の後に続いて中に入る。

すると、彼女が1冊の絵本を手に取った。

表紙には可愛らしい動物たちが描かれている。

どうやら、うさぎの出てくる童話のようだ。

それをじっと見つめる彼女を見て、俺も自然と笑みがこぼれる。

彼女に気付かれないようこっそりとその様子を見守り、少し経った頃、声をかけた。

「その本買うん?」

そう言うと、彼女は恥ずかしそうにしながら小さく頷いた。

そして、続けてこう言った。

『妹に買ってあげたいの。この前、友達と喧嘩したみたいで落ち込んでるから、元気になって欲しいなって……』

きっと、優しい姉なんだろうなと思うと同時に、少し寂しさを感じた。

家族の話をする時の彼女はどこか悲しげな表情をしているからだ。

その理由はわからないけれど……

そんなことを考えていたら、いつの間にかレジに向かっていた。

慌ててその後を追いかける。

会計が終わり、袋を受け取った後、再び彼女と手を繋ぎなおす。

そして、俺たちは再び歩き始めた。

少し歩くと、先にクレープの屋台が見えてきた。

ちょうど小腹が空いていたので、2人で食べることにした。

「Aちゃん、何味にするん?」

メニューを見ながら聞くと、彼女は迷ったような顔をした後、こう答えた。

『苺味にする…!』

瞳をキラキラさせてそう答える彼女を微笑ましく思った。

「じゃあ俺はバナナにしよっかな〜。」

2人分の代金を払って注文する。

『あっ、湊くん!私も払うよ??』

財布を取り出そうとしている彼女を止める。

だって、女の子に払わせるなんてカッコ悪いやん?

そう思いながら、にっこりと笑ってみせる。

『あ、ありがとう……』

困ったように笑う彼女の頭を撫でてあげる。

それから数分待った後、頼んでいたものができたのでそれを受け取り、近くのベンチに腰掛ける。

美味しそうにクレープを食べる瑠璃ちゃんを見て、なんだか幸せな気持ちになった。

『湊くんっ!これ美味しい…!』

満面の笑みを浮かべてこちらを見る。

それがあまりに可愛いくて、少しドキッとした。

「あ、Aちゃんクリームついてんで?」


10話→←8話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (40 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
112人がお気に入り
設定タグ:2j3j , fw
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おふとん天使 | 作成日時:2023年7月11日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。