8話 ページ8
*
そろそろ湊くん来るかな…
私はさっきまで読んでいた本を閉じ、ベッドの上に寝転がった。
結局、今日も保健室にいることになった。
家に帰っても誰もいないし、ここに居た方が楽なのだ。
時計を見ると、もうすぐ授業が終わる時間になっていた。
ガラガラッ
扉の開く音がしたので起き上がる。
ドアの方を見るとそこには湊くんの姿があった。
彼は私を見つけると嬉しそうな表情をした。
私も思わず笑顔になる。
「迎えにきたで〜!」
そう言いながら彼は近付いてくる。
『ありがとう。もう準備万端だよ。』
「おっけー!じゃあ行こか!」
私たちは並んで歩き出した。
昇降口を抜け校門を出る。
しばらく歩いた後、彼は急に立ち止まった。
不思議に思って振り返ると、真剣な眼差しで私を見つめている。
どうしたのだろうと思っていると、彼は突然私に手を差し出してきた。
『えっと……?』
何のことだろうと思って首を傾げていると、彼は不思議そうな顔をして言った。
「手、繋がんの?」
その言葉で理解した。
彼は、私が迷子にならないように手を繋いでくれると言っているのだ。
恥ずかしいけれど、迷子になっちゃうよりはマシだと思い、彼の手を握った。
すると、彼は優しく微笑み、ゆっくりと私の手を握り返してくれた。
そのまま並んで歩く。
心臓がドキドキと音を立てているのがわかる。
「どっか行きたいとこある?」
聞かれて考える。
遊園地とか水族館とかいろいろ考えたけれど、やっぱり1番最初に思いついたのは本屋さんだった。
でも、いきなりそんなことを言い出して変に思われないか心配になった。
せっかく誘ってくれたんだし、ここは遠慮せずに行こう。
私は意を決して答えた。
『……本屋さんに行きたいです。』
*
112人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おふとん天使 | 作成日時:2023年7月11日 8時