幻想【fw】 (ページ6)

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6話ページ6

＊

「これ、よかったら使って。」

差し出された上着を受け取ると、ほんのりと温かかった。

彼の体温が残っているようだ。

ありがとうと言い、ジャージを着させてもらった後、2人でプールから出た。

外はすっかり暗くなっていた。

学校を出て、並んで歩く。

無言のまま歩いていると、突然彼が立ち止まった。

『どうしたの？』

不思議そうにしていると、彼は私をじっと見つめた。

「天野さんの目、綺麗よな〜。」

そう言って優しく微笑むと、私に手を伸ばしてくる。

反射的に目を瞑ってしまった。

すると、前髪に触れられたのを感じた。

ゆっくり目を開けると、彼は私の髪を手ですくって眺めている。

ドキッ

まただ。

この感覚は何なのだろう。

鼓動が速くなっていくのを感じる。

『Aでいいよ。不破くんだって、目すごく綺麗だよ。』

そうだ。

彼の目は本当に綺麗なのだ。

さっき水の中で見た時も思ったけれど、改めて近くで見ても吸い込まれそうになるほど美しいと思う。

「そう？ありがと、Aちゃん。」

嬉しそうに笑う彼を見て、私もつられて笑った。

こんな風に笑ったのはいつぶりだろうか。

久しぶりに心の底から笑えた気がして嬉しかった。

「俺のことも湊でいいよ。これからよろしくなぁ〜。」

彼はそう言い、手を差し出してきた。

私は躊躇いながらもその手を握り返した。

＊