23話 ページ23
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「Aちゃん。俺はAちゃんのこと何も知らんのかもしれん。でも、それでも……Aちゃんが好きだよ。君が背負ってるものも全部ひっくるめて……」
そこで一度言葉を区切る。
彼女の涙を拭ってやり、額と額をコツンとくっつける。
それから再び口を開いた。
「愛してるよ。」
一瞬、Aちゃんは大きく目を見開いた。
けれどすぐに、愛おしそうな眼差しに変わる。
それから、ぎゅっと俺の服の裾を掴んだ。
俺の首に腕を巻き付けて、胸に顔を押し付けてくる。
そして、俺の背中に回した手に力を込めた。
しばらくそのままの状態でいると、落ち着いたのかAちゃんが俺から離れた。
それから、真っ赤になった目を細め、幸せそうに笑う。
『ごめんね、湊くん……でも、これが最初で最後だから許して欲しい。お願いします。どうか、私を忘れないでください。あなたの心に私を刻みつけてください。あなたの中で生きさせて下さい。私は湊くんのことが好きです。大好きです。』
その言葉を聞いた瞬間、彼女のことを離さないと決めた。
たとえ、この恋が叶わなくても、ずっと大切にしようと思った。
___忘れることなんてこと、できるわけがない。
俺は、Aちゃんの頬に手を添えて触れるだけのキスをした。
Aちゃんも、それに応えるよう俺に口付けてくれた。
そして、お互いの顔を見て笑い合う。
きっと俺たちは、今日という日を一生忘れないだろう。
その次の日から、Aちゃんは学校に来なくなった。
彼女と、連絡が取れない日々が続き、気づいたら1ヶ月、2ヶ月、1年、5年……
そうして俺は大人になってしまった。
__それでも、今でも君のことが好きだよ。
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作者名:おふとん天使 | 作成日時:2023年7月11日 8時