20話 ページ20
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ドーンッ
再び、花開く音がする。
だけど、先程までの綺麗さはなく、散ってゆく様がどこか切なく感じる。
まるで、私の恋のようだと思った。
「Aちゃん、綺麗だよ。」
不意に放たれた彼の一言に、心臓が跳ね上がる。
そんなことないと言おうと口を開きかけたけれど、すぐに思い留まった。
あなたが、私の大好きなあなたがそう言うのなら、きっとそうなのかもしれないと思ったからだ。
ドーンッ
最後の一発が打ち上げられて消えてゆく。
それと同時に祭りの終わりを告げるアナウンスが流れてきた。
ああ……終わってしまう……
楽しい時間はすぐに過ぎ去って行ってしまう。
私は寂しさを感じながらも、彼の手を引いて立ち上がった。
最後にもう1つ、どうしても伝えておきたいことがあったから。
私は彼の胸に飛び込み、背伸びをして、彼の首に腕を巻き付けた。
それから、耳元で囁くようにして想いを伝える。
___ありがとう。
私の言葉を聞いた彼は少しの間固まっていたけれど、次の瞬間、力強く抱きしめてくれた。
この時間が永遠に続けばいいのにと願わずにはいられない。
でも、そんなことはありえないのだ。
だって、私たちの時間は限られているのだから。
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作者名:おふとん天使 | 作成日時:2023年7月11日 8時