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12話 ページ12




Aside

走って家まで帰り、震える手で玄関の扉を開けた。

そのまま部屋に駆け込み、ベッドに飛び込む。

枕に顔を埋め、声を殺して泣いた。

『あぅ……ひっく……』

最初は嬉しくて仕方がなかった。

人から遊びに誘われたことなんて今まで無かったから。

それに、湊くんが私のことを選んでくれたことも、手を繋いでくれたことも、全部夢みたいに幸せだった。

だけど、それと同時に怖くなった。

私は、いつか彼に捨てられるんじゃないかって。

『あ……陽菜……ひ、なっ…』

妹の名前を呼ぶ。

本当は妹なんていない。

妹はもっと前に死んでいる。

私が殺した。

妹が死んでからというもの、毎日のように悪夢を見て飛び起きる。

そして、眠るのが怖いから夜通し起きている。

寝不足のせいで日中は頭が働かないし、授業中もよく眠ってしまう。

だから、学校には行きたくない。

私は縋るようにして妹の名前を呼んでいた。

いつの間にか泣き疲れて眠りについてしまったようで、目が覚めた時には辺りはすっかり暗くなっていた。

起き上がる気力も無く、ボーッとしていると、部屋のドアが開く音が聞こえてきた。

ガチャリ

入ってきたのは妹の陽菜だった。

あれ?私まだ夢の続きを見てるのかな?

だって、死んだはずの妹がいるなんておかしいもんね。

でも、なんでだろう?

なんだかすごく安心するような感じがする。

陽菜が私に近づいてきて、優しく頭を撫でてくれた。

懐かしいな……

昔は私の方がよくこうして頭を撫でてあげてたよね?

そういえば、喧嘩したときも仲直りするときも、いつも頭を撫でてあげたらすぐに機嫌良くなってたっけ?

そう思い出すと、また悲しさがこみ上げてきて、涙が出てきた。

「お姉ちゃん、絵本買ってきてくれてありがとう!陽菜のために買ってくれたんでしょ?」

突然、そんな言葉が降ってきた。

そうだよ、そうなの。

ずっと謝ろうと思ってて……

でも、言えなくて……

言葉の代わりに嗚咽が漏れ出す。

すると、陽菜はぎゅっと私を抱き締めた。

そして、頭を撫でながら優しい声で囁いてくれる。

「大丈夫だよ。お姉ちゃんは何も悪くないよ。毎日頑張ってて偉いね。」

なんて都合のいい夢なんだろう。

本当に気持ちが悪いくらいに出来すぎていて、吐き気がする。


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作者名:おふとん天使 | 作成日時:2023年7月11日 8時

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