🌕EP.147 ページ9
前の2人が気になり過ぎて、すっかり周りが見えなくなってしまっていた。
す、すみません・・・
慌てて手を放す。
「バカが、手を離すな。馬から落ちるだろ」
兵長はそう言って軽く振り向き、私の手首を掴むと自分の方へとグイッと引き寄せた。
兵長の背中に軽く頰が当たる。
はい
そう素直に返事をして、大人しく兵長に掴まる。
馬の上で手を離すなんて・・・私、何してるんだろう。
兵長もきっと呆れてるだろうな。
一瞬、反省と共にしょげるが、前方にチラつくその原因を見ると、またもやイライラが再燃してくるのが不思議だ。
・・・兵長、やっぱり男の人って、綺麗な女の人と一緒に居るのが嬉しいものなんですか?
子供っぽい発言である事は分かっているが、ついポソっとそんな事を聞いてしまう。
「あぁ・・・あれか。・・・さあな。人それぞれなんじゃねえのか?」
兵長は前を見て続けた。
「・・・だが少なくとも、俺はああいうのはシュミじゃねぇし、お断りだ。非常時でもない限り乗せねえ」
私も本当は分かっている。
こういう事はごく稀な事で、いつもはアーチャーがマスターである私を常に気遣い、騎士のように守ってくれている。
そう、それはもう過保護なほどに。
今回だって一応、彼は女性と馬に乗って良いかと私に確認を取ってくれたのだ。
でも足を捻っている彼女を前に、アーチャーが他の女性と一緒に馬に乗るのは嫌だなんて、なにか子供っぽい我儘な気がして言う事が出来なかった。
だから自分が撒いた種でもあるのだ。
ちゃんと分かっていても、やはり感情は上手くコントロールできず、どうしようもなくイラついてしまう。
落ち着かない心の正体は子供っぽい独占欲なんだろうか?それも・・・未だに分からない。
そんな風に持て余す感情に振り回されてる心に、さっきの率直でハッキリとした兵長の物言いが染み渡っていくのを感じた。
その時、
「・・・それよりお前、大丈夫か?」
突然兵長から問われる。
だ、大丈夫ですよ!な、何も心配なんてしてないですし。だってアーチャーは私のサーヴァントですもん
慌てて言い返すと、最後に軽く舌を噛んだ。
まるでオルオさんみたいだ。
動揺のあまり、余計な事も言ってしまった気もするし。
「いや、そうじゃねえんだが・・・」
まあ、いいと言って、兵長は再び前を向く。
その反応に少し違和感を覚えたが、再び前方の2人の様子を目で捉えて、疲れ果てた私はそこから先を考える事を諦めたのだった。
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作者名:kokubyaku | 作成日時:2019年9月18日 19時