🌕EP.159 ページ21
「・・・まずい、逃げるぞ！」
そう言うと、エレンは私の手を引き、仔牛の逆方向に勢いよく走り出す。
は、速い！
子供と言えど、牛は牛。
猛スピードで追いかけてくる。
しかし、想像していたメーちゃんとは大分違うメーちゃんだ。
「しつこいな！あいつ！！」
後ろを振り向きながら、確認するエレン。
エレン！前見て、前！！
私たちの前方には大きな水溜り。
昨日降った雨のせいだろう。
しかし、だからといって後ろから追いかけられている以上、立ち止まる事はできない。
躊躇いなく、そこを走り抜ける。
当然、靴は濡れてしまう。
泥は飛び散り、ズボンどころか、勢いよく顔にまで跳ねてきた。
その時、フッと身体が浮くと、エレンと繋いでいた手が離れる。
「真っ直ぐに逃げるバカがあるか！避けろ！」
いち早く異状に気がついたのか、いつの間にかこちらに来ていたアーチャーは、私を抱え、木の上に避難し、エレンを見下ろしながらそう言った。
「そんな事はわかってんだよ！・・・ってか、木の上に逃げるなんてズルイぞ！！お前！」
その時、後方からアーチャーに向かって結構太めな木の棒が飛んできた。
「エレンはバカじゃない！エレンにはエレンの考えがある！」
ああ、こんな時にミカサの逆鱗に触れてしまった・・・
今はそれどころじゃないのに。
私は思わず頭を抱えた。
アーチャーは、飛んできたそれを軽々と避けると言った。
「危ないな、君はそんな物を投げる暇があるなら、少し冷静になって、仲間を呼びに行ってはどうだ？」
ミカサはアーチャーをキッと睨むが、
「いいのか？このままでは、君の大事なエレンが大変な事になるぞ？」
アーチャーのその一言で、我に返ったのか、ミカサは急いで孤児院に向け走り出す。
しかし、ミカサが走り出した時点で、既に他のメンバー達は孤児院から出てきていた。
どうやらアーチャーが突然居なくなった事に気付いて何かあったのかと出て来たようだ。
仔牛に追いかけられているエレンは、逃げ場所を求めて、皆の方向へと走っていく。
「ば！バカ！！来るな！！」
コニーが叫ぶ。
「あれ、食べちゃダメなやつですよね！？」
とサシャ。
「ダメなヤツだよ！普通に！」
とアルミン。
「おい！サシャ！弓を構えるな！！」
本能のままに弓を構えるサシャに、ダメだと言ってるだろうと慌ててジャンが止める。
ヒストリアはまずいと思ったのか、子供たちを連れて大急ぎで避難し、孤児院の扉を閉めた。
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作者名：kokubyaku | 作成日時：2019年9月18日 19時
