🌕EP.156 ページ18
少し聞こえる内容を耳で拾うと、どうやら食べられる野草について、アーチャーと情報交換しようとしているようだ。
姿を現して、サシャの質問にちゃんと答えるアーチャーも、いつのまにか、皆にすっかり馴染んでるなと思うと、なんだか私も嬉しくなる。
しかし、そのほのぼのとした雰囲気の中に暗い顔が混じっている。
ジャンとエレンだ。
エレンは、硬質化の実験で疲れてるのかもしれない。
でも、ジャンは何故だろう?
気になって、ジャンに声をかける。
ジャン、調子悪いの?大丈夫?
私の問いかけに、何でもねえよと答えるが、その声には力がなかった。
「あー、ジャンは子供達に顔が怖いって言われてるから、拗ねてんだよ」
コニーがからかうような口調で言った。
「バッ、そんなんじゃねえよ」
「やっぱり子供は分かるんですかねー。優しい人が」
サシャが突っ込む。
確かにサシャとコニーは子供の扱いが上手く、なつかれやすい。
それに比べれば、ジャンはちょっと子供からすると、近寄りにくいタイプなのかもしれない。
「安心しろ。オマエとコニーは子供達から仲間認定されてるだけだから」
ジャンが言い返す。
そのままの流れでエレンの方を向き、
「オマエも似たようなもんなんじゃねぇのか?」
と、チョッカイをかけるジャンだったが、エレンは、はぁ。と、一言だけの気のない返事をして押し黙った。
「あーあ。俺も別に元気が溢れちゃいねえが、またコイツは世界の不幸を一身に背負ってやがるのか。ホントやってらんねぇぜ」
肩透かしを食ったジャンがそうぼやく。
ジャンの挑発にも乗らないなんて。
どうやらエレンの調子は、私の想像以上に良くないようだ。
ここ最近の出来事から言って、確かに昔のままの、エレンではいられない事はわかっている。
だが、小さい頃から、無鉄砲なくらいに元気なエレンを知っている私は、それに少し寂しさを覚えた。
そして、離れた位置に座るエレンに、声をかけようとしたその時、馬車は孤児院へと到着した。
荷馬車から降りると、待ち兼ねたように子供達が飛び出してきて、私達の周りを囲んだ。
ミカサが、クッキーの入ったバスケットをヒストリアに手渡す。
子供達が、興味津々にそれを覗き込んだ。
「美味しそう!」
「食べたいなぁ〜」
笑顔を浮かべ、口々に言う子供達に、
「お菓子は後でね」
と、ヒストリアが優しくもしっかりした口調で声をかける。
子供達は、はーいと元気よく返事をした。
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作者名:kokubyaku | 作成日時:2019年9月18日 19時