不確定原理についての考察。 ページ3
「恋って、何?」
「――え?」
私の友人――立花 彩の返答は、戸惑いに満ちていた。
「いやだからさ、何なのかな。」
「…んーと、誰かが異性を好きになること、かな…?」
ほら、みんなそう言うの。
「じゃあ家族は? お父さんとか、先生が好きの”好き”との違いは?」
「え、えー…?」
昼下がり、秀明のランチルーム。
少し寒くなってきて、もう家では衣替えが終了した、そんな季節。
そりゃ授業の休み時間に疲れてる子、しかもアーヤにこの質問は無理があったかもだけど…。
「学校でみんなの話題がこれだから、気になるの…!」
もう13歳、そんなお年頃。
すっかり女子の話題はそれでもちきりだ。
私はそういうギャーギャーした輪は苦手だけど、知らないことは気になるの。
「――不確定原理の塊だよ。」
「…え?」
上からかかった少しのんびりした声に顔を上げる。
「…小塚くん?」
ニコッっと親しみやすい、優しそうな笑顔を浮かべる男の子。
「やぁ、芽吹さん。奇遇だね、この時間帯で会うなんて。」
そう、この小塚和彦くんは別名”シャリの小塚”。
社会と理科がすごく得意なんだ。
私も理科は苦手じゃないし、好きだけど、小塚くんにはまったく及ばない。
今はクラスが離れてるから、こうして顔を合わせるのも最近じゃ少ないんだ。
「いいかい芽吹さん。僕もあんまりわからないけど…たぶん化学式なんかじゃ解明できないものなんだ、恋って。」
椅子を引いて隣に座った小塚くんが話し始める。
「近くなったと思ったら、何かあっただけでパッと離れたりすることもある。」
へぇ。
「ほんの少しで始まったりしることもある。ほらね、不確定要素ばっかりの、不確定原理の塊みたいだろ?」
コクンとうなずく。
「うん! じゃあ、もう分からなくていいや。科学の世界じゃ不確定原理の説明って、今のところ不可能に近いもの…。」
小塚くんのいいところは頭がいいだけじゃない。
優しくてほんわかしてて、しかも趣味がいっしょだから二人でいてもアガラないんだ。
そう、私は極度の照れ屋。
でもね、小塚くんと私は波長が合ってる。
いっしょにいて心地いいし、過ごしやすい。
「不確定原理、ねぇ…。」
そう呟いて下を向き、考え事を始めた小塚くん。
何を思っているのかは、いくら観察してもわからなかった。
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作者名:ろぜ&月読命 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/arutemisu/
作成日時:2017年12月11日 23時