【wrwrd】旅先の国で弟に出逢いました。【男主】Zwei

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『Wenn ich ein Vöglein wär' Und auch zwei Flüglein hätt', Flög' ich zu dir.
Weil's aber nicht kann sein, Weil's aber nicht kann sein, Bleib' ich allhier.』

灰色の部屋に僕の声だけが響き、最後に僅かな残響を残して消えていく。

『懐かしいなぁ。この歌昔歌ったきり一回も歌ってなかったっけ。確か曲名は…』

「小鳥ならば、だっけ？にしても歌が上手だね」

僕しかいない筈の部屋にもう一つの声が聞こえてきて反対的に音源の方を振り向く。そこにはグリエーフが立っていた。だけど別にそれ以上反応する事はしない。もう慣れていたから。
　アイツはこの部屋に決まった時間に、いや僕が体感的にそう思っているだけで違ってるかもしれないけど、にやって来ては話をしにやって来る。

『居たんですか？しかしノックもせずに入って来るのはどうかと思いますけどね』

だけどアイツは僕の言葉に反応する事無くヘラヘラと言うのがぴったりな笑みを浮かべて話しかける。

「初めて聞いたかもね、君が歌ってるの。ねぇそんなに帰りたいの？」

『至極当然な質問をしないで下さい。誘拐されて帰りたく無いと思う人間がいると思うんですか？』

「まぁそうだけど、君には悪いニュースがあるんだよね。しかもとびっきりの」

“とびっきりの”その単語で実験がもう始まるのかと心構えをしたが、アイツが小声で「僕にとっても」と零したことで気が緩む。
　アイツにとっても嫌な事？一体何だろ…

「実は国防大臣にwrwrd国の人間、つまり君を捕まえてるってバレて情報を吐かしに時より兵を派遣するってね。
　君が破損するのは嫌だけど殺さない程度って条件が付いたし、僕あの人には逆らえないからねぇ。まぁ頑張って」

・・・理不尽にも程があるでしょ。捕まって、脱出不可能で、おまけにそれって。それにこのクソ野郎絶対楽しんでやがる。
　でも表情に出さない様にうっすらと微笑みを浮かべて誤魔化す。

『そうですか。話はそれだけですか？』

アイツは僕が予想外の反応をした事に驚いたのか一瞬狐に摘まれた様な顔をすると鼻で笑って

「そうだね。それじゃあまたね、それと勝手に逝かないでよ？」

と言うと部屋を去って行った。
　一度溜息を吐き絶望感をかき消す様にさっきの歌の二番を歌う。

『Bin ich gleich weit von dir, Bin ich doch im Traum bei dir Und red' mit dir.
Wenn ich erwachen tu', Wenn ich erwachen tu', Bin ich allein.』

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