33話 ページ35
医務室に行こうとすると、廊下で中丸隊長と蘇我くんが話していたので慌てて物陰に隠れる。
中丸「敵も味方も関係なくか。お前が神御蔵に拘る理由が少し理解出来た気がする」
蘇我「いや、隊長っ」
中丸「仲間の命も凶悪犯の命も、奴は同様に守るべきものだと考えているわけだ」
蘇我「自分は、絶対に認めません！犯罪者は檻から出れば半分以上が凶行を繰り返します。それがこの国の紛れのない現実。自分の姉を死に追いやった・・・現実です。俺は、認めない、絶対に・・・」
最後の方は絞り出す様に、自分に言い聞かせる様に話す蘇我くんに、中丸隊長は拳を胸に押し付け何も言わずにその場を去って行ってしまった。中丸隊長の姿が見えなくなると、蘇我くんは一つ息を吐いた。
蘇我「そんな所にいないで出てこい、A」
いきなり名前を呼ばれて肩を揺らす。隠れていても仕方がないので蘇我くんの前に姿を見せる。
蘇我「聞いていたのか」
A「・・・ごめんなさい」
蘇我「いや、謝ることでもない」
蘇我くんの顔が見れなくて、うつ向いたままズボンをキュッと握る。あの言葉は蘇我くんの本当の声、気持ちで胸が締め付けられる様に痛かった。うつ向いたままでいると、頭に蘇我くんの手が乗った。反射的に顔を上げると、蘇我くんが困ったような顔をしていた。
蘇我「まだ濡れてる。ちゃんと拭かないと、風邪をひくだろ？」
さっきの表情と違い、柔らかな表情をする蘇我くんに涙が込み上げてしまった。
A「っ・・・」
蘇我「な？！・・・何で泣く」
A「ごめん・・・」
泣きたかった訳じゃない。一番苦しい思いをしているのは蘇我くんなんだから・・・。涙を止めようとしていると、温かな温度に包まれ、目の前が黒一色になった。蘇我くんに抱きしめられていた。
A「蘇我く・・・」
蘇我「Aに泣かれると、どうしたらいいのか分からなくなる」
グッと肩に回されていた手に力が込められる。
A「そ、蘇我くん！大丈夫！もう泣いてない！」
というか、驚きすぎて涙なんか引っ込み、代わりに私の心臓が早鐘を打つ。
蘇我「・・・」
A「泣いてないから、離して・・・」
そっと彼の胸に手を当てて軽く押すと、ようやく離れてくれた。
蘇我「・・・ちゃんと乾かせ」
それだけ言って、彼は立ち去って行った。
残された私は力なく壁にもたれ、熱くなった頬を手で覆って、冷めるまでその場から動く事が出来なかった。
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マナ - 雪華さん» こんにちは…聞いてもいいですか？ (2021年7月17日 10時) (
レス) id: 961826b387 (このIDを非表示/違反報告)
雪華(プロフ) - M・Sさん» ありがとうございます！こんな作品を面白いと言ってくださって！頑張って更新していきます！！ (2014年6月8日 18時) (レス) id: 017fc2355a (このIDを非表示/違反報告)
M・S(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！続きがきになります！続編頑張って下さい、応援してます！ (2014年6月8日 17時) (レス) id: f9726902e1 (このIDを非表示/違反報告)
愛歌(プロフ) - 続きが気になります♪更新頑張ってください！ (2014年6月6日 0時) (レス) id: 6931f89d5d (このIDを非表示/違反報告)
茉乃音 - 面白いです！これからも頑張ってください！！応援してます！！ (2014年6月2日 18時) (レス) id: 0d8e8f0117 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪華 | 作成日時：2014年5月20日 17時
