君と見た世界 (ページ13)

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郁人くん今ちょっと来れるか?

「あ。ちょっと寮監棟行ってくるね」

健「付き添うよ」

食堂を出ようとしたところで、郁人くんからLIMEが入った。

「いや大丈夫です。ここの隣ですよね」

健「それでも心配だから一緒に行かせて」

風「中島過保護すぎ。この短距離なら大丈夫だろ」

健「ふーまがそう言うなら……あまり長居せずに帰ってくるんだよ」

「はーい」

最後まで心配そうにこちらを見つめる健人先輩に見送られて寮監棟を訪ねる。話を通してくれてたみたいで、郁人くんの部屋まで案内してもらえた。

「失礼しまーす」

郁「おお、来たな」

「うん。急にどうかした？」

郁「荷物ミスって１つだけこっちに来ててな。衣類って書いてあるし、困るだろうと思って呼んだわけよ」

「あ、それお礼言おうと思ってたんだよ〜。荷物の手配ありがとね！」

郁「おう。まあ、生徒会加入は俺の指示だしそれくらいはやるよ」

「そーなの？」

郁「あれ、健人に聞いてない？お前が素直に従うわけないから、俺の指示だって伝えてって言っておいたんだけど」

「いや。女だってバラしちゃうよ？って脅されはしたけど、それは聞いてないや」

郁「なんだその面白そうな展開。まあいいや。仕事面倒かもしれんが、これもお前のためだ。頑張ってくれ」

「うん」

僕のため？なにか考えがあってのことなんだ。郁人くんの期待を裏切らないようにガンバろー。

「そういえば、お兄ちゃんの事なんだけど」

郁「何か思い出したのか？」

「ううん。ただ心配で。風邪とか引いてない？」

霞みがかっててちゃんとは思い出せないが、僕には兄がいる。もう何年も会えてないけど、深い愛情をくれた大好きで大切な兄だ。郁人くんは居場所を知ってるのに、会わせてくれない。だからいつか自分自身で見つけて会いに行くんだ。それまでは安否確認だけで満足しないと…。

郁「元気だよ。この前も散々愚痴を聞かされた」

「そっかぁ、ホッとした。お兄ちゃんが元気にしててくれないと、僕生きてる意味ないもん」

郁「そう、だな」

郁人くんの顔が明らかに歪んだのはわかった。でも、今日も見ないフリをした。

「あ！そろそろ帰らなきゃ」

郁「おう、気をつけて帰れよ」

徒歩５分もない距離で大袈裟な…なんて思いながら寮監棟の入口に出てくると、壁にもたれる人影。