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襲撃の翌朝。
おれは朝が弱いから、基本朝飯は食わねェ。
だが昨日はよく眠れなくて珍しく食堂に来ていた。


「え、お前も?今日は本当に珍しい日だな!」

「あ?」

「おー怖!機嫌悪ィな!ほれ、あの2人も来たんだよ。寝てるけどな。」

サッチに言われて見ると、おれと同じく朝が弱くて起きられないマルコとお嬢がいた。
マルコは頬杖ついて寝てるし、お嬢はマルコの肩に凭れて寝ている。

「起こしてやってくれ。生憎おれっちは手ェ離せないんだ。誰も起こせないからさ、頼むぜ!」

確かに2人を起こそうなんて奴、クルー達の中にはいねェよな。


「ほらお前さん達、起きな。飯食わねェなら部屋に戻って寝ろ。」

「んー…。」

「あ"?」

マルコの圧のある声に近くにいたクルーが情けない声を上げた。
おれはため息を1つ吐いて、マルコは後回しにする事に決めた。


「お嬢、起きな。飯冷めるぞ?」

「んぅ…ふぁあ…。」

艶のある声を上げて伸びをするお嬢に、食堂にいた全員が顔を赤らめ反応した。
またおれはため息を吐いた。頭が痛い。

「お嬢!こんな所で寝るな!」

「んっ!イゾウ…?」

気だるげに持ち上げられた瞼から覗く青い瞳が、まっすぐにおれを映していた。
それもまた伏せられようとしている。

「寝るなって。起きろ。」

「イゾウ…珍しいわねェ…起き、てる、の…。」

「ああ、お前さんもな。まず飯食おうぜ?寝るならその後にしろ。」

「眠い…。」

「そうだな。ほら、口開けな?」

「あー…。」

一口にちぎったパンを口に入れてやると、ようやく少し目が覚めたらしい。

「…ありがとう、イゾウ。」

「どういたしまして。やれやれ、手のかかる兄妹だねェ。」

「ごめんね?…マルコ!起きて!!」

「んーなんだよい…。」

まだ起きないマルコに、お嬢は何か思いついたらしく、耳元で何かを囁くと、今まで開かなかったマルコの目が開いた。

「おはよう、マルコ。」

「おはよい、A。」

何事もなかったかのように食べ始める2人。
一体何を言ったんだろうか。
疑問が顔に出ていたのか、お嬢は少し笑ってそっと教えてくれた。

「起きて、お兄ちゃんって言ったら目が覚めたの。」

ふふって耳元で笑うから、当たる吐息が擽ったい。
花のような香りを残して離れていくのが名残惜しく感じる。


「普段やらない事はやるもんじゃないわね。」

「だな。」

とは言ったものの、たまにはこんな朝もいいのかもしれないなと、不謹慎にも、そう思った。

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ルイ(プロフ) - 哀羅さん» 一緒にイゾウ沼にずぶずぶになりましょう!!!(助ける気なし) (2020年11月27日 21時) (レス) id: a0dbe60605 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅(プロフ) - イゾウ様がとにかく最高すぎてムフムフニヤニヤデレデレが止まらないです(もはや変態。助けて下され。) (2020年11月26日 22時) (レス) id: 11aacecd07 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 哀羅さん» ワンピはイケオジたくさんいますよね!んーー、ちょっと構想練ってみましたけど、思いつきません笑短編集でなら書けそう...? (2020年11月15日 23時) (レス) id: a0dbe60605 (このIDを非表示/違反報告)
哀羅(プロフ) - レイリーさん、やっぱり最高すぎる笑笑なにあの、紳士!いけおじ!紳士の塊!ほんと最高かって。ルイさん、レイさんオチの小説書いてくれません笑?それか同じイケオジなら、ベンさんでもいいかもっ!どちらも小説ないですから汗 (2020年11月15日 22時) (レス) id: 11aacecd07 (このIDを非表示/違反報告)
ルイ(プロフ) - 哀羅さん» 可愛いですよね!双子はお互い恋愛は自由だと思いつつ、目に付いてしまうとお互いに嫉妬心出ます笑 (2020年11月8日 21時) (レス) id: a0dbe60605 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨音 | 作成日時:2020年10月30日 20時

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