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小｜中｜大
カァン！！
大きな弦音が弓道場に響き渡った。
その瞬間、静かだった場内がわっと歓声で満ち溢れた。
これだ、これなんだ。
やっぱりこの音だ。
音に貪欲になるように2本目もセットして、すっと弓を引いた。
またあの音を聞きたい。
カァン！！
思わず溢れ出る笑み。
なんていい音なんだ。素晴らしい音じゃないか。
｢すっげぇ……俺こんなことできないや…｣
｢ねぇ、かっちゃん、あれって……｣
｢あぁ、俺の、理想の射だ。こんなところで見れるなんて…！｣
また更衣室で道着から制服に着替える。
またやってしまった。
弦音に貪欲になって、間髪入れずに2中させてしまった。
これだから、あんなことが起きるんだ。やっぱり、いくら中るとしてもこれをずっと続けていく訳にはいかない。
こんなんじゃ、いつか人も＿＿＿＿＿＿
｢おい、お前｣
いかん、ダメな考えが一瞬頭の中で過ぎってしまった。ふるふると頭を振ったあとに、声をかけられた方に振り向くと、そこには壁にもたれかかっている、あの例の子が。
｢秋川Aだろ｣
『うん。君は？』
｢小野木海斗だ。秋川、お願いだ
弓道部、入ってくれ｣
『ねぇ、やめてよ。そんなことで頭下げないで』
咄嗟に驚いて、彼をとめた。
まさか、彼が頭を下げるだなんて。
弓 ページ10
.
嗚呼、今でも思い出すだけでぞっとする。
あのピンク髪の子の顔。
俺の心理でも見透かされそうなあの表情の抜け落ちた顔。
手の内を作る。そして、物見をして、的を見定める。
ファンだからなんなんだ。もう俺は死んだんだ。
弓道界の神童、秋川Aは死んだんだ。
打起しして、大三をする。
段々と大きくなるおぉという歓声。
何度聞きたことか。
俺のファンだと言ってくれたあの子も真剣な眼差しで俺を見ている。勿論、静弥もどこか懐かしむような目で俺の射を見ていた。
会
弓道というのはこういうことだ、と言わんばかりに大きく弓を引いて保つ。
上唇と下唇の間に合わせて
すると、あるポイントが俺の中でびびっときた。
目の奥がバチバチと弾けて、全身がここだと叫ぶ。
離さずにはいられなかった。
すっと真っ直ぐ弽から弦を離すと、矢は直線上に沿って飛んでいった。
弧を描くことも無く、ただ、真っ直ぐ、己の道を歩むように。
大きな弦音が弓道場に響き渡った。
その瞬間、静かだった場内がわっと歓声で満ち溢れた。
これだ、これなんだ。
やっぱりこの音だ。
音に貪欲になるように2本目もセットして、すっと弓を引いた。
またあの音を聞きたい。
思わず溢れ出る笑み。
なんていい音なんだ。素晴らしい音じゃないか。
｢すっげぇ……俺こんなことできないや…｣
｢ねぇ、かっちゃん、あれって……｣
｢あぁ、俺の、理想の射だ。こんなところで見れるなんて…！｣
また更衣室で道着から制服に着替える。
またやってしまった。
弦音に貪欲になって、間髪入れずに2中させてしまった。
これだから、あんなことが起きるんだ。やっぱり、いくら中るとしてもこれをずっと続けていく訳にはいかない。
こんなんじゃ、いつか人も＿＿＿＿＿＿
｢おい、お前｣
いかん、ダメな考えが一瞬頭の中で過ぎってしまった。ふるふると頭を振ったあとに、声をかけられた方に振り向くと、そこには壁にもたれかかっている、あの例の子が。
｢秋川Aだろ｣
『うん。君は？』
｢小野木海斗だ。秋川、お願いだ
弓道部、入ってくれ｣
『ねぇ、やめてよ。そんなことで頭下げないで』
咄嗟に驚いて、彼をとめた。
まさか、彼が頭を下げるだなんて。
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作者名：不満 | 作成日時：2022年9月1日 1時
