雫が四十一粒 ページ43
あの後、中原が家に入って来て、取り敢えずリビングに移動した。
「あれ?太宰さんは？」
一緒に来た筈の太宰が居なくて、中原に訪ねると、「あんな奴ほっとけ。」と言ってAを落ち着かせるために中原がコップに水を入れAに手渡した。
「有り難うございます。ちょっと、落ち着きました。」
琴音がAのその様子を見てひどい顔だねと言いながらティッシュを差し出した。
Aがそれをうるさいと言いながらティッシュを素直に受け取り、鼻をかんだ。
「全く、元気そうで何よりだよ。」
「琴音の馬鹿。」
「はいはい。」
久しぶりの再会を噛み締めているのか、それとも久々のこの会話ができることが嬉しいのか、琴音とAはとても楽しそうにしている。
琴音がチラリと玄関とリビングを繋ぐドアに目を向た。
「太宰さん。何時までそこに突っ立って居るおつもりですか？」
琴音がそう言うと、向こうから溜め息が聞こえ、ガチャリとドアが開いた。
「お久し振りですね、太宰さん。此方の素で話したのはあのとき以来ですね。」
あの時とはきっと、Aが鉄鋼に下敷きにされたと聞き、パニックに陥った時の事だろう。
琴音は今まで太宰に向けたことがないような優しい笑みを、太宰に向けた。
その顔を見た太宰がギリッと歯ぎしりをし、蔑んだ目で琴音を見た。
「君に聞きたいことがある。何故君は、何も言わない。」
その言葉を聞き、Aはキョトンとしたが、琴音はその言葉を理解し、呆れたように笑った。
「貴女は馬鹿ですね。言わないに決まっているでしょう。だって私はそれ程の罪を犯してしまったのだから。私は、許される筈が無いんです。あんな事をされて当然ですよ。あれは貴方から私への罰だ。
だから私は、その罰を喜んで受け入れます。」
は?という間抜けな声が太宰から漏れた。
意味が分からない、そう言いたげな顔をし、琴音を見る。
琴音の顔には、一切の憎悪がなかった。かといって嘘をついている素振りもない。
琴音は太宰のその顔を見て、Aを見て、中原を見た。
そして優しく、Aの頭を撫で、太宰にまた顔を向けた。
「私を、探偵社に連れていって下さい。全てを、お話します。」
中原から不満の声が聞こえるが、琴音はそれを無視して太宰の返事を待った。
太宰は渋々ながらもそれに承諾した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狼狐(プロフ) - 必殺！一気読み！！▼狼狐は一気読みを繰り出した▼ ←マジです。1時間で読み終えました(遅)感動し過ぎで泣きました。最初悪女に成り切れない悪女ってどゆこと？って思ってましたがこーゆーこととは････！納得です★あぁ、続きが見てぇ･･･ (2022年2月12日 17時) (
レス) id: 563f93d61f (このIDを非表示/違反報告)
つくも(プロフ) - 感動のあまり、涙が……泣けました。コレってアニメ化しないんですか？(冗談です)続編が見たいです。あ、でも、コレで終わりってなるのも味的に良いかも……うあ、でも…………見たい！見たいです！！！ (2021年7月3日 15時) (レス) id: 3b5cd0d846 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - 味付けのりぃさん» そう言って下さり有り難うございます！ (2019年8月9日 13時) (レス) id: 4f3f949d42 (このIDを非表示/違反報告)
味付けのりぃ - あああぁぁぁ…まじで涙出たぁぁぁぁ…いい話すぎる(？)この作品を作ってくれてありがとうございます…！こんなん泣くしかねーわ(( (2019年8月9日 1時) (レス) id: cae02b46bd (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - 557*ｺｺﾅさん» この作品を読んで下さり有り難うございました!! (2019年7月29日 13時) (レス) id: 4f3f949d42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
