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少年は、メニュー表をクリクリとした可愛らしい目で見詰めた。人差し指を唇にあてがい、首をかしげて見ている。
「うーんと……」
知佳は小さなお客様の可愛らしい仕草を見て目をきゅっと細めて笑顔になった。いつもと違うお客様に新鮮さを感じ、自分の今亡き子供と錯覚してしまっていた。知佳にとっては胸が躍るような出来事だ。
「じゃあ!! あっ、でも〜……」
「どれと悩んでるのかな?」
メニューを一緒に覗き込み、短く細い指を目で追った。
「ぶどうジュースと、バナナジュース、でもオレンジジュースも……」
少年はそう言って、唇をじぐざぐにしながら背中を反らして元に戻った。子犬のような無邪気な瞳に知佳はすっかり心を奪われてしまっていた。
知佳自身もそれを自重しているが、それは上辺だけで、内心では自分も気づいていないほどにこの少年にどっぷりとハマってしまっている。
「じゃあ、オレンジジュース飲もっか? ぶどうじゃないんだけど、ブルーベリーケーキを今日、お試しで作ってみたんだけどそれ食べない?」
「えっ、いーの!?」
「もちろん。今日来てくれたお客さんに出してる商品なんだけど、反応が良かったらメニューに載せようと思ってるんだ」
「やったぁ! おばさん大好きっ」
「ありがとう。お土産にはバナナクッキー持たせてあげるね」
知佳はそう言って、黄色のフチの丸皿を出した。子供のお客さんの場合は、オレンジやピンク色と言った明るい色のお皿を出すようにしている。
少年は靴を脱いで椅子の上で立ち上がり、カウンターに小さな手をつけた。知佳がお皿の上にケーキを盛り付けて行く様子をマジマジと落ち着きもなく見詰めていた。
知佳はにこにこの笑顔でケーキをお皿に乗せて、フォークと一緒にカウンターへお出しした。少年は今にもとっかかりそうなほどにケーキを見ているが、知佳の
「今からオレンジジュース作るからちょっと待ってね」
の言葉に行動を止めていた。足をジタバタさせ、誰でもお叱りを受けるその行動だが知佳には愉快で、愛おしいものに感じた。
11→←9 ひとりの少年 【三人称←作者が練習中のため御容赦下さい
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ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - 結凛@受験生さん» まさかこのノリは……! いいともー!(*≧∀≦*) ですよね! コメントありがとうございます。読んでくださるのが一番の喜びです。貴方らしい文を書けるように頑張って下さい。影で応援しています。 (2014年6月12日 21時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
結凛@受験生(プロフ) - ゾッとしました!あなたのような文を書けるように頑張ります!!…頑張っていいですか。 (2014年6月12日 20時) (レス) id: 918e1a30d0 (このIDを非表示/違反報告)
ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - +aさん» ありがとうございます!! 題名から読み負けるとは、思ってもみませんでした(わら) 最初は「静かな珈琲屋」だったんですけど、途中からホラーになり題名を変更させていただきました。個性は抑え目にと思って作品を書いているんですが、出てしまうものですね(;´・ω・) (2014年5月20日 23時) (レス) id: 3f02585d56 (このIDを非表示/違反報告)
+a(プロフ) - 題名が気になって読んでみました!なんだかすごく個性を感じました! (2014年5月20日 22時) (レス) id: 20cb8101ab (このIDを非表示/違反報告)
ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - まふぇ。さん» コメント、毎回ありがとうございます(*^^*) ラストで幻滅されると思ってて、実は内心ビビってました(汗) 先生と呼ばれるに相応しい人になりたいです! 頑張ります。まふぇ。さんの作品にもチョコチョコ遊びに行きます。完結まで読んでいただき、お疲れ様でした! (2014年5月6日 17時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナンシー・ハジェンズ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年5月2日 18時