9 ひとりの少年 【三人称←作者が練習中のため御容赦下さい ページ9
知佳は長方形の店をバタバタと走りながらドアへ急いだ。アイスベージュ色のジーンズに通された白くて細い足が上下に揺れる。
ドアを開け、知佳は目を丸くした。驚きのあまり後ろへ一歩下がり、たじろぐ。
それもそのはずだ。知佳はこの店で働いて以来、こんな事は一度だってなかった。小学1年生ほどのひとりの少年が、知佳の方に頭を上げてにこにこと笑っていた。
少年のあまりの凝視っぷりに戸惑いながらも、知佳は微笑み返して腰を降ろした。
勿論、この店には年齢制限はなく誰でも入店出来るのだが、子供の場合は親子連れか友達同士が一般的で少年がひとりでいるのはあまりにも不自然だった。
「いらっしゃいませ。どうしたの? 迷子になっちゃった?」
知佳は笑顔を浮かべた少年の頭を撫でた。少年の髪の毛は柔らかくふわふわとしていた。
そして、しゃがんで気付いたが前歯が2本とも抜けていて空洞で、その他数本も抜けていた。子供はこの年に歯が抜けて永久歯が生えてくる頃だ。
知佳の自分の赤ん坊がもしこの世に生を受けていたら、これくらいの年頃だろうか。
少年は知佳に頭を撫でて貰うと、横に首を振った。知佳は少々驚き、また目を丸くして頭を撫でるのを辞めた。
「ママがここでジュースでも飲んでなさいって! ママが友達と話こんじゃってて、僕何もすることがなくなっちゃったの」
「そう。じゃあお客さんだぁ。中に入って座っててね?」
「うん!」
元気にハキハキと話す少年を中へ誘導して、知佳は庭に立てかけてある看板を両手で持って、不器用にも運んだ。パンケーキの絵が描いてあるが、他にももっとメニューがある。
少年はまだ足の着きそうにない高い椅子に座って周りを見渡す。足をブラブラさせている所を見ると、落ち着きのない様子だった。
知佳は中にいる少年を見て脚を止める。
あの少年が知佳には他人だと思えなかった。
中に入って看板を出入り口のすぐ横に立てかけた。外と中の明るさが微妙に違った。知佳はカウンターの内側へ足をせっせと運ばせながら、
「何飲もっか? アレルギーとかあるのかな?」と問うた。
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ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - 結凛@受験生さん» まさかこのノリは……! いいともー!(*≧∀≦*) ですよね! コメントありがとうございます。読んでくださるのが一番の喜びです。貴方らしい文を書けるように頑張って下さい。影で応援しています。 (2014年6月12日 21時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
結凛@受験生(プロフ) - ゾッとしました!あなたのような文を書けるように頑張ります!!…頑張っていいですか。 (2014年6月12日 20時) (レス) id: 918e1a30d0 (このIDを非表示/違反報告)
ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - +aさん» ありがとうございます!! 題名から読み負けるとは、思ってもみませんでした(わら) 最初は「静かな珈琲屋」だったんですけど、途中からホラーになり題名を変更させていただきました。個性は抑え目にと思って作品を書いているんですが、出てしまうものですね(;´・ω・) (2014年5月20日 23時) (レス) id: 3f02585d56 (このIDを非表示/違反報告)
+a(プロフ) - 題名が気になって読んでみました!なんだかすごく個性を感じました! (2014年5月20日 22時) (レス) id: 20cb8101ab (このIDを非表示/違反報告)
ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - まふぇ。さん» コメント、毎回ありがとうございます(*^^*) ラストで幻滅されると思ってて、実は内心ビビってました(汗) 先生と呼ばれるに相応しい人になりたいです! 頑張ります。まふぇ。さんの作品にもチョコチョコ遊びに行きます。完結まで読んでいただき、お疲れ様でした! (2014年5月6日 17時) (レス) id: 5c4ab849ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナンシー・ハジェンズ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年5月2日 18時