お気に入りとかお前らヒトサマなめてんだろ 2【灰谷兄弟】

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チュンチュン(幻聴)


デジャヴだわ。


目の前にムッキムキの腹筋に刺青。

黒金黒金の派手髪。





昨日のことを思い出して、さぁっと顔に熱が集まった。


そんなまだ出会って間もない人に……私は……



初めてだった。



人前で泣いたのは。

あ、今までもちろんあったけど、転んだとか骨折したときにだけ。


家のことについて、人前で泣いたのは初めてだった。





「あっA起きた？大丈夫？って顔やば！！」



『失礼だなてめえ。自分の顔が多少(めちゃくちゃいい)良いからって人に言っていいことと悪いことがあんだよあぁん！？』



「大丈夫そうだな。A昨日めちゃくちゃ泣いてたから目が腫れてんだよ」


『え？まじ？』


「うん」


『まぁいいや。すぐ出てくから、もうちょっと辛抱してくれ。良ければ洗面所貸してくれると嬉しい』


「は？」



『え、そんな怒る？』


心の器小さくね？
まだドーラの方が優しいよ。


「お前の家に帰るのか？」


言葉につまる。


帰るの？あの家に？

もしかしたらまだいるかもしれない。

出ていけって言えよって言ったけど、実際にそう言われるのを想像したら、心臓がきゅっと縮んだ。



帰りたくない……





黙ってしまった私を、竜胆はしばらく鋭い目付きで見ていたが、ふぅ、とため息をついて腰に手を当てた。





「とりあえず飯作ったから食ってけ。洗面所は玄関のすぐ近くの扉な」

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