お気に入りとかお前らヒトサマなめてんだろ 2【灰谷兄弟】

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最近、Aの様子がおかしい。




妙にそわそわして、落ち着かない。スマホを見てはにやにやしてる。




どうしたのかと聞いても、なんでもないの一点張り。




「兄貴」


「行くぞ」



その日はいつもなら着ないはずの水色のワンピースを着て、嬉しそうに出ていったA。




もちろん尾行する。



来たのはAの町の駅。


そこでもAはそわそわそわそわしている。

スマホを確認しては広場の時計を見て。



小さな苛つきが鎌首を持ち上げた。


誰をまってんだよ。そんなに楽しそうに。



『あっ、こっちだよ！久しぶりー！』


来たッ。



「きょ、今日は楽しみだねっ」



男だ。


そう思ったとたん、表情が抜け落ちた。



冷たく、熱い感情が脳を支配する。


やめろ。そんなふうに笑うな。

その男が、ヤバいやつだったらどうするんだ。


一歩踏み出す。


「竜胆。待て」


兄貴が、制止をかける。

その顔を見て、息を飲んだ。



「獲物は泳がせといて後から食うのがいいだろぉ」



そういう口は弧を描いているが、まったく目が笑ってない。


その笑みを作らせた獲物はただ一人として逃れられる者はいない。



終わったな。



まぁ止めるつもりなんてないけど。




そんなことを考えるうちに、移動しているAと肉塊。



なんでそんなに楽しそうにしてるんだよ。


ぐるぐると黒い感情がとぐろを巻く。




「は？」




肉塊がAの頭を撫でた。



思わず絶対零度の声が漏れる。



てめえ、誰に断ってAを触って……




その後ろで、禍々しいほどの殺気を醸し出す兄貴。



あまりの強さに少し冷静さを取り戻した竜胆。



お先真っ暗のAに少し同情した。

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