Forevermore (ページ34)

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‐トロント国際空港‐

『忘れ物ない？大丈夫？』

　出国ゲート前で最後の確認を結弦くんにすると

「あっ

パスポート忘れた」

はあ？

『嘘でしょ！？ホントに！？』

「うっそー。

ちゃんと持ってるし、忘れ物ないから。

何回試合に行ってると思ってんだよ。」

『お願いだから、今冗談言わないで。

全然笑えないから』

「・・・ごめん」

腕時計を見ると、もうあまり時間はない

あと何かできる事ないかな？

空港まで来て、出来る事なんてもう何も無いって分かってるんだけど
何かあるかもしれないと色々考えてみるけど、何も浮かばない。

「A、そわそわし過ぎ。落ち着けよ。」

『そうだね・・・ごめん』

「ここまで来たんだから、あとは何とかするよ」

『・・・うん』

今日までやれるだけの事はやったつもり

もうあとは、結弦くんが自分で何とかするしかない。

『痛み止め持った？』

「持ったよ」

『いっぱい？』

「ふはっいっぱい持った。大丈夫だよ。」

他は何か忘れちゃいけない物なかったっけ？

「A」

名前を呼ばれて、顔を上げると結弦くんが両手を広げて待っている

ギュッ

しっかりと結弦くんに抱き着いておく

わたしのパワーとかエネルギーとか全部結弦くんに行きますように！

「ありがとうね、A。

俺、絶対金メダル獲るから」

『うん、待ってる。

絶対、大丈夫だよ・・・大丈夫だから』

怪我をしてからのリハビリとかトレーニングとかを思い出して、泣きそうになるけど
必死に涙がこぼれないように上を向く

「泣かないんでしょ？」

『・・・泣いてない、まだ。」

次に泣くのは結弦くんがオリンピック連覇した時って約束したから。

結弦くんが乗る飛行機の便名をコールするアナウンスが流れた

「じゃ、行ってきます」

『行ってらっしゃいんっ』

体を離した瞬間にチュッと唇を奪われた

びっくりして動けずに、固まってしまう

その間にも結弦くんはチュッチュッと唇を重ねてくる

『っんっ

もうダメだってば！』

「大丈夫だよ

周りみーんなキスしてるし」

確かにここは出国ゲートの目の前だから、別れを惜しむ家族や恋人が最後の挨拶を交わしてる

「ね？」

結弦くんは満面の笑みで覗きこんでくる

今日だけだからね

『結弦くん？』

「なに？んっ！」

『行ってらっしゃい。』

「びっくりしたぁ、行ってきます」

珍しくわたしからキスをして送り出す。