Forevermore (ページ32)

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‐2018年 1月クリケットクラブ‐

ブライアン「Yuzu,slowly skating.Remember feeling on the ice.(ユズ、今日はゆっくり滑ろう。氷の上の感覚を思い出すように)」

『Ok, I try it.』

ゆっくり深呼吸をして、エッジカバーを外して氷に乗る

いつものように両手で氷をサッと撫でて滑ってみる。

うわっ

さすがに2ヶ月も滑ってないと感覚がリセットされてんな

ゆっくりリンクを1周して

痛み止めが効いてれば滑るのは問題なさそう・・・かな。

今のとこ右足に痛みはない。

ブライアンの方を見ると、頷きながら片手でそのまま滑るように指示された

まずは、とにかく滑って氷の感覚を取り戻さないと

そのまま滑り続けて、2時間ぐらい経ってブライアンから今日の練習は終了だと告げられた。

調子に乗って滑り続けても右足の負担になるだけで良い事はないから、ブライアンの指示に従う

俺がリンクから出てロッカーに向かうと、入れ違いでハビが前から歩いてくる

ハビ「Hi,What' up?」

『No problem,I think.』

ハビ「It's good.Bye」

『Bye』

いつもなら同じ時間帯に練習するけど、さすがにオリンピック前ではそうはいかない。

ハビの調子が良いと俺にとっては脅威だし、逆に俺の調子が良いとハビにとっては脅威になる

こんなところで互いに意地を張って、怪我でもしたらそれこそ冗談じゃ済まない

ブライアンはそれが分かっているからこそ、俺とハビの練習時間をずらしたんだろう

『さすが、ブライアン』

ブライアンの気遣いに、改めてコーチの偉大さを感じた

『ただいま』

「おかえり」

　家に帰って、出迎えてくれたAの顔を見ると「どうだった？」と顔に書いてある。

「？」

『・・・』

俺が黙ってると、だんだんAの顔が曇ってくる

表情豊かだな、おもしれえ

『滑ったよ。

滑ったって言っても、ほんとにリンクをぐるぐる回ってただけだけど』

「滑れたんだ、良かった～。

びっくりさせないでよ！

何かあったのかと思ったじゃん！」

『ははっ、ごめんごめん。

しばらくはスケーティングで感覚取り戻して、

ジャンプはそれから』

「そうなんだ。

ごはんとお風呂どっち先にする？」

『お風呂』

Aは「分からないから」ってスケートに関しては何も突っ込んで聞いてこない。

俺にはそれが有り難かった。