Forevermore (ページ12)

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いい時も悪い時もページ12

SPからの大逆転で世界選手権を制した日から約1ヶ月後、Aはカナダ・トロントに来ていた。

‐トロント国際空港‐

「A！」

　到着ゲートから出て、周りをキョロキョロしていると、結弦くんの声が聞こえた。その方角を見てみると、眼鏡をかけただけの結弦くんが立って手を挙げてるのが見えた。

『もう！ちゃんと変装するっていう約束だったでしょ？』

スーツケースを引きながら、結弦くんの元へ駆け寄る。

「大丈夫だって。ここでカナダだよ？」

『でも、日本人だって大勢いるでしょ？乗って来た飛行機では日本人の方が多かった！』

「A、シー」

結弦くんは自分の唇に手を当てて、静かにするようにジェスチャーをする。

「日本の人が大勢いるんでしょ？Aがそんなに大きな声出しちゃだめじゃない？」

『・・・・・』

確かに、そうだけど・・・・・

痛いところをつかれて思わず黙ってしまうわたしを見て、結弦くんは満足げに微笑んでいる。

なんか納得いかないのはどうしてかな・・・

「会いたっかたよ、A」

そう言って結弦くんは片腕でわたしを軽く抱きしめた。

「・・・わたしも」

軽くハグを交わすと、結弦くんは右手にわたしのスーツケース、左手はわたしとしっかり繋いで空港の玄関に向かって歩き始める。

少し歩くと空港と直結している駅に着いた。

「ちょっと待ってて。」

結弦くんはわたしを改札近くで待たせて、慣れた様子で目的地までの切符を2人分購入してくれる。

　

　海外旅行に行った事は何度もあるけど、カナダは初めてでちょっとワクワクしている。

結弦くんを待っている間、周りの様子を見てみる。

足早に通っていく人や自分の目的地までの切符の値段を調べている人もいる。

結弦くんの隣の券売機で購入していた男性は切符を手に取ると、すぐ後ろにいた女性にチュッとキスをしていた。

『なんで切符買っただけでキスする必要があるの？』

海外の人はオープン過ぎるというか、何というか、今のそれ要る？

「何見てんの？」

いつの間に隣にいたのか、結弦くんが切符を片手に立っていた。

『切符買っただけで、キスする必要ある？』

「こっちじゃ日常風景だよ。リンクサイドでだってするんだから。はい、切符」

『ありがとう』

「よそ見ばっかして、迷子になんないでよ、A」

『大丈夫、たぶん』